研究課題
がん組織におけるマクロファージはTumor associated macrophageと呼称されているが、TAMにはCD163が高発現している。これまで、マーカーとしてしか理解していなかったが、CD163に腫瘍促進性作用があることが明らかとなった。CD163遺伝子欠損マウスでは、マクロファージがM1-likeの活性化を有しており、腫瘍の発育も抑制された。肺転移も抑制されていた。この研究では、ヒト未分化肉腫検体を用いて、CD163陽性TAMが多い症例ほど予後が悪いことも明らかにした。本研究から、CD163を抑制することががん治療につながることが示唆された。リンパ節マクロファージはLySMあるいはSCSマクロファージとも呼称されており、抗原提示能を有すると言われている。食道癌と膀胱癌症例のリンパ節検体を用いてCD169陽性LySMと臨床病理学的因子の関連性を検討した。LySMにおけるCD169発現は、予後良因子であった。CD169発現が高い症例ほどがん組織へのリンパ球浸潤が高い傾向に有り、がん免疫反応との関連性が示唆された。膠芽腫は、治療抵抗性の腫瘍である。膠芽腫と正常脳との境界部位において傍突起膠細胞とマクロファージ・ミクログリアが増加していることを見出した。マクロファージから産生されるHB-EGFやIL-1bが膠芽腫細胞のコロニー形成を増加させることが明らかとなった。マクロファージが傍突起膠細胞の増殖を誘導している可能性も示唆された。
2: おおむね順調に進展している
がんとマクロファージの研究においては、TAMとLySMに関する研究を行った。2018年度は、Cancer ResearchやEBioMedicine、Cancer Scienceなどで論文を発表することができた。また、それ以外にも、脳悪性リンパ腫や腎細胞癌、膵癌における免疫微小環境の研究を発表した。神経変性疾患などに関しても共同研究を行った。
現在、肺癌・乳癌における免疫チェックポイント分子の発現とマクロファージの関連性、乳癌におけるLySMの重要性、脳腫瘍におけるTAMの重要性、子宮内膜症におけるTAMの重要性、卵巣がんにおけるTAMの重要性、悪性リンパ腫におけるTAMの重要性を明らかにするとともに、M2/Protumor活性化を制御する化合物の探索も平行して行う。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 10件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件)
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