研究課題/領域番号 |
16H05164
|
研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
國安 弘基 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (00253055)
|
研究分担者 |
北台 靖彦 県立広島大学, 人間文化学部, 教授 (10304437)
千原 良友 奈良県立医科大学, 医学部附属病院, 研究員 (40405395)
大森 斉 奈良県立医科大学, 医学部, 研究員 (80213875)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | クローディン / 間葉系幹細胞 / 細胞間相互作用 / 上皮間葉移行 / 癌転移 / ヘテロスフェア |
研究実績の概要 |
クローディンを介したヘテロ細胞間相互作用として、大腸癌の転移能に対する骨髄間葉系幹細胞(MSC)と大腸癌細胞の相互作用におけるクローディンの役割を検討した。高肝転移性のKM12SM に対しKM12Cは低転移性の親株である。両細胞をヒトMSCと共培養するとEMT変化はKM12Cでは見られなかったがKM12SMでは認められた。このとき、培養上清中の乳酸およびpHを測定するとKM12SMではKM12Cよりも乳酸濃度は高くpHは低下していた。pH6.8~7.6の培養液で共培養を行うと、両株ともに低pHではMSCと癌細胞との接着が亢進しており、EMT変化が認められた。共培養系で、ピルビン酸デヒドロゲナーゼを阻害するとEMT変化が促進され、逆にPDKを阻害すると抑制された。一方、乳酸トランスポーターを阻害すると培養上清の乳酸濃度は低下しEMT変化は抑制された。MSCと癌細胞との接着部には、両細胞の細胞膜にclaudin-6の発現が見られ、上皮性claudinをノックダウンした上で共培養すると、低pHでtight junctionが形成された。以上の結果から、乳酸発酵によるエネルギー産生が細胞外pHを酸性化することにより、間質中のMSCとの接着性を促進することが癌細胞のEMT形質の獲得に役割を果たしていることが示唆された。さらに、酸性環境でKM12SMとMSCを非接着ディッシュで共培養するとヘテロ・スフェアが形成され、細胞間にはclaudin-6によるタイトジャンクション形成が認められた。このヘテロスフェアをヌードマウス脾静脈から接種するとKM12SMのみで形成したスフェアに比較し肝転移が増加した。このように、claudin-6を介したMSCと大腸癌細胞の細胞間相互作用は、EMTを誘導し転移能を促進した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
クローディン4抗体の安全性については、マウスES細胞を用いた腸管形成システムならびにヒトオーガノイド形成システムを用いた検討のため、各システムの確立を行っている。
|
今後の研究の推進方策 |
クローディン4抗体の安全性について、マウスES細胞を用いた腸管形成システムと抗マウス・クローディン4抗体を用いた系、および、ヒトオーガノイド形成と抗ヒト・クローディン4抗体を用いた系により、腸管におけるコンパートメント仮説を実証する予定である。
|