研究課題/領域番号 |
16H05165
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
古川 徹 東北大学, 医学系研究科, 教授 (30282122)
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研究分担者 |
樋口 亮太 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (20318059)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 膵臓がん / 分子標的 / 信号伝達経路 / オルガノイド / 細胞培養 |
研究実績の概要 |
本研究は膵臓癌(膵癌)切除組織より癌細胞のオルガノイド培養を行い、これまでの二次元培養とは異なる、より生体内に近い、三次元的なマトリックス中で増殖した膵癌細胞について、網羅的な分子プロファイリングと動的な分子ネットワーク相互作用の解析をする事で、膵癌細胞の生存、増殖、遊走、浸潤、造腫瘍性に直接関与するエフェクター分子を明らかにし、それらの分子診断治療標的化を検討して、新たな診断バイオマーカー、分子治療標的を同定する事を目的としている。膵癌切除組織からのオルガノイド培養を継続して行い、培養細胞の表現型を解析した。オルガノイド培養は既報(Broutier et al. Nat Protocol 11:1724-43, 2016)によっていたが、その方法では十分に癌細胞が得られないことが明らかとなり、細胞分離の方法、培地の組成等を種々変えて実験した。結果、既報とは異なる分離方法及び組成の培地で培養することで正常細胞の増殖抑制と癌細胞の培養維持がより可能となる方法を新規に開発した。さらに、膵癌では臨床的に外科切除可能例においても術前化学療法を行うことで患者予後が有意に延長することが示され、術前化学療法が標準治療となりつつあるが、本研究材料においても術前化学療法を行なった例から癌細胞を分離し培養を行う機会が増加した。術前化学療法を行なった膵癌組織から分離した癌細胞は化学療法抵抗性の癌細胞であると考えられ、そのような癌細胞におけるシグナルネットワークの変化を解析する機会を得たが、そのような癌細胞をオルガノイドとして培養するにはこれまでの培養条件とはさらに異なる培養条件が必要であることが判明し、現在さらに種々の培養条件を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
術前化学療法を行なった例から癌細胞を分離し培養を行う機会が増加し、そのような膵癌細胞により適したオルガノイド培養の方法の開発を行う必要があることが判明したため、進捗としては当初予定からはやや遅れているものの、当初想定範囲内の遅れに留まっており、研究期間を十分に取っていることから当初計画に沿って研究を進めることが可能である。
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今後の研究の推進方策 |
膵癌では臨床的に外科切除可能例においても術前化学療法を行うことで患者予後が有意に延長することが示され、術前化学療法が標準治療となりつつあり、術前化学療法を行なった例から癌細胞を分離し培養を行う機会が増加した。術前治療後の膵癌組織から分離培養した癌細胞におけるシグナルネットワークを調べることで化学療法抵抗性機序及びそれに対する効果的な対処法を明らかにすることができると考えられ、本研究の実用性をさらに強化するものであり、研究環境の変化に柔軟に対応しながら精力的に研究を進める。
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