研究課題
GISTに見られる遺伝子変異のうち、それぞれ全GISTの約10%を占め、かつ分子標的薬イマチニブに初期耐性を示すことの多いc-kit遺伝子の細胞外領域 (exon 9) の重複変異 (Dup-502&503) とPDGFRA遺伝子のキナーゼドメインII (exon 18) の点突然変異 (Asp842Val)、そして比較的頻度が高く、悪性度も高いことから、画像診断用および治療標的としての重要性があると考えられるc-kit遺伝子の傍細胞膜領域 (exon 11) の欠失 (Del-557&558) に対して、特異的に反応するモノクローナル抗体を作製し、この抗体を用いて画像診断や治療に応用すべく研究を進めた。昨年度に良いクローンが得られなかった、c-kit遺伝子のDup-502&503を持つKITに特異的に反応するモノクローナル抗体およびPDGFRA遺伝子のAsp842Valを持つPDGFRAに特異的に反応するモノクローナル抗体の作製については、再度の作製を試みたものの、やはり特異的な抗体を得ることができなかった。c-kit遺伝子のDel-557&558を持つKITに対するモノクローナル抗体に関しては、クルードな状態では抗体価の高い分画がELISA法で確認されたが、最終的にはクローン化することができなかった。GISTに関する並行した研究として、イマチニブ耐性GISTの細胞株や患者検体を用いてゲノムおよび蛋白レベルで耐性と関連のある分子の解析を行った。また、胃の大型GISTに対する術前イマチニブ治療の有効性を明らかにした。さらにイマチニブ耐性GISTに対するSOCS1の遺伝子治療がFAK/PI3Kシグナル系を介して効果を表すことも示した。生殖系列にBRCA2変異とc-kit変異を同時に持つ患者の解析や、GISTと平滑筋肉腫の併存する腫瘍の検討などの報告も行った。
4: 遅れている
平成29年度中にはc-kit遺伝子の細胞外領域 (exon 9) のコドン502番とコドン503番の重複変異 (Dup-502&503) を持つKITに特異的に反応するモノクローナル抗体、PDGFRA遺伝子のキナーゼドメインII (exon 18) の点突然変異 (Asp842Val) を持つKITに特異的に反応するモノクローナル抗体、およびc-kit遺伝子の傍細胞膜領域 (exon 11) に見られる欠失 (Del-557&558) を持つKITに特異的に反応するモノクローナル抗体を得たいと考えていた。ペプチド鎖を合成してマウスを免疫し、抗体価の上昇までは確認され、脾細胞 (リンパ球) とマウスの抗体非産生性のミエローマ細胞とを細胞融合させるところまでは達成され、クルードな状態ではあるが抗体価の高い分画がELISA法で確認されたものもあったが、最終的なクローニングの段階で特異的に反応するモノクローナル抗体を産生する細胞を得ることはできなかった。
c-kit遺伝子の exon 9 のコドン502番とコドン503番の重複変異 (Dup-502&503) を持つKITに特異的なモノクローナル抗体の作製、c-kit遺伝子のexon 11に見られる欠失 (Del-557&558) を持つKITに特異的なモノクローナル抗体作製、およびPDGFRA遺伝子のキナーゼドメインII (exon 18) の点突然変異 (Asp842Val) に特異的なモノクローナル抗体に関しては、ペプチド合成部位の変更などにより、再度の作製を試みる。十分なイマチニブの効果が期待できない、c-kit遺伝子のexon 17に見られるAsn822Lys変異に対するモノクローナル抗体の作製も試みる。何度かの抗体作製の試みがうまくいっていない状況を鑑み、関連する事項として、c-kit遺伝子のexon 9のDup-502&503 変異・exon 11のDel-557&558変異・exon 17のAsn822Lys変異、PDGFRA遺伝子のexon 18のAsp842Val変異の臓器特異性を含む臨床病理学的特徴を明らかにし、その基盤となる病態について検討することも視野に入れる。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
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