研究実績の概要 |
これまでわれわれは肺癌の発生機序について、発生母地の生物学的違いに基づくtwo compartment modelを提唱してきた。近年他施設からもこのモデルによって説明可能となる結果が多く報告され、このモデルによって生物学的な意味をもって統合できる可能性を示している。本研究では、4つのテーマ(#1.mutation loads/burden, #2. Unique translocations, #3. Cis-type amplification, #4. Stepwise progression model)に沿って検討を遂行した。 課題#1について、次世代シークエンサーでの網羅的遺伝子変異検索をスタートし、mutation burdenの基礎となる遺伝子変異情報を蓄積した。TMBの算定方法については、現在CAP/AMPによるコンセンサスガイドラインの作成が進みつつあり、ガイドラインの制定に積極的に関与するとともに、その完成をまってそれと整合性を取りつつある。 課題#2については、未知の反復する融合遺伝子は見出されなかったが、既知のドライバー遺伝子との新たな融合パートナー遺伝子を見出し、論文作成中である。 課題#3. cis-type amplificationの検討については、Amplicon sequenceにて遺伝子多型部位とドライバー変異とが同時に見える部位を複数抽出し、cis-typeに変異が加わっていることを確認するとともに、その遺伝子増幅について検討した。EGFR以外には増幅している遺伝子は少なく、あったとしても数コピーの増加にとどまり、その生物学的意義について検討を進めている。 課題#4についての基本構想については、概念および仮説を書籍の章としてまとめることができた。また共同研究として行った早期病変の結果も加え、さらなる概念の発展につなげていきたい。
|