研究課題/領域番号 |
16H05169
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
渋谷 和子 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (00302406)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 免疫学 / 免疫系受容体 / 制御性T細胞 / 炎症性腸炎 |
研究実績の概要 |
クローン病や潰瘍性大腸炎に代表される炎症性腸疾患は、腸粘膜の慢性炎症を主徴とする原因不明の難治性疾患である。炎症性腸疾患の病態においては、Th17細胞やTh1細胞などがエフェクター細胞として炎症を惹起しており、一方、制御性T細胞(Treg細胞)が炎症を抑制していることが知られている。 DNAM-1はT細胞をはじめとする免疫細胞に発現する活性化受容体である。私達はこれまでにDNAM-1のリガンドがCD155とCD112であることを同定し、DNAM-1とリガンド結合によって惹起される免疫応答が、自己免疫疾患やGVHDなど様々の病態に関与していることを示して来た。 本研究では、リガンドを共有している活性化受容体DNAM-1と抑制受容体TIGIT、CD96が協調して、ブレーキとアクセルのようにTreg細胞を正負に制御しており、活性化受容体とリガンドの結合を阻害することで、抑制受容体によるTreg細胞の免疫抑制機能が促進され、炎症性腸疾患の病態が改善するという仮説をたて、これを検証する。 DNAM-1、TIGIT、CD96によるTreg細胞の機能制御と炎症性腸疾患における役割を解析する目的で、1) TIGITノックアウトマウス 2) CD96ノックアウトマウス 3) DNAM-1 floxマウス 4) TIGIT floxマウス 5) CD96 floxマウス 6) Treg特異的DNAM-1ノックアウトマウス7) Treg特異的TIGITノックアウトマウス 8) Treg特異的CD96ノックアウトマウスを樹立する必要があるが、29年度までに1) ~5)までのマウスを樹立した。また、既存抗体よりも親和性が高く有用な抗ヒトDNAM-1抗体(TX94)を新たに樹立した。さらに、マウスTIGITに対する特異的中和抗体(TX99)の樹立にも成功し、次年度の病態解析への準備が整った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
DNAM-1、TIGIT、CD96によるTreg細胞の機能制御と炎症性腸疾患における役割を解析する目的で、1) TIGITノックアウトマウス 2) CD96ノックアウトマウス 3) DNAM-1 floxマウス4) TIGIT floxマウス 5) CD96 floxマウスの5種類のマウス系統を、順調に樹立した。また、既存抗体よりも親和性が高く有用な抗ヒトDNAM-1抗体(TX94)を新たに樹立した。さらに、マウスTIGITに対する特異的中和抗体(TX99)の樹立にも成功した。今後はこれらのマウスならびにDNAM-1 floxマウスとFoxp3-CREマウスと交配して、Treg特異的DNAM-1ノックアウトマウス、Treg特異的TIGITノックアウトマウス、Treg特異的CD96ノックアウトマウスを樹立するとともに、作製した特異抗体を用いて、DNAM-1、TIGIT、CD96の各欠損Treg細胞のin vitroの機能解析、ならびに炎症性腸炎におけるin vivoの機能解析を行う。
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今後の研究の推進方策 |
DNAM-1、TIGIT、CD96によるTreg細胞の機能制御と炎症性腸疾患における役割を解析する目的で、H30年度は、これまでに樹立したDNAM-1 floxマウス、TIGIT floxマウスとCD96 floxマウスとFoxp3-CREマウスと交配して、Treg特異的DNAM-1ノックアウトマウス、Treg特異的TIGITノックアウトマウス、Treg特異的CD96ノックアウトマウスを樹立する。 また、DNAM-1特異抗体による炎症性腸疾患の治療効果の解析のために、すでに私たちが樹立した抗マウスDNAM-1中和抗体(TX42)ハイブリドーマと、H29年度に樹立した親和性が高く、リガンド結合阻害効率の高い抗ヒトDNAM-1中和抗体(TX94) ハイブリドーマから、抗マウスDNAM-1抗体ならびに抗ヒトDNAM-1抗体を大量に精製する。さらに、H29年度に樹立したTIGITに対する特異的中和抗体(TX99) ハイブリドーマから、抗マウスTIGIT抗体を大量に精製する。 以上、材料がそろったところで、DNAM-1、TIGIT、CD96各遺伝子欠損Treg細胞の機能をin vitro、in vivoの両側面から解析し、Treg上のDNAM-1、TIGIT、CD96の機能を明らかにする。さらに、Treg特異的DNAM-1ノックアウトマウス、Treg特異的TIGITノックアウトマウス、Treg特異的CD96ノックアウトマウスに炎症性腸炎を誘導したり、炎症性腸炎を誘導した野生型マウスに特異的中和抗体を投与したりすることによって、炎症性腸炎病態におけるTreg上のDNAM-1、TIGIT、CD96の機能を明らかにする。 さらには、ヒト化マウスを用いて、マウスで得られた知見をヒトTreg細胞でも検証し、マウスで得られた知見がヒトに応用できるかどうかを検証する。
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