研究課題
本研究は、ヒト疾患モデルとしてβ2-ミクログロブリン(β2-m)アミロイドーシスを選び、発症の分子機構を総合的に解明する。具体的に、①種々の生体分子がβ2-mアミロイド線維形成を促進・抑制する分子機構、特に細胞外シャペロンのβ2-m線維形成抑制機構解明、② β2-m線維による細胞・組織傷害機構解明、③ β2-m線維形成・沈着を阻害する有機化合物探索、④ ヒトアミロイドーシスに共通する発症機構や治療戦略と共に、アミロイド沈着の臓器特異性を説明する作業モデルの提案、の4点を目的とする。平成28年度は、①変異型 β2-m(D76N)線維形成を促進・抑制する細胞外マトリクス分子や細胞外シャペロンの探索と分子機構解析、および②ヒト変異型 β2-m(D76N)トランスジェニックマウスの作成と繁殖を中心に研究を行った。① CRPとSAPが、AβおよびD76N β2-mのアミロイド線維形成を、濃度依存的かつsubstoichiometricに抑制することを明らかにした。② SAPは、線維形成のみならずグルタチオン-S-トランスフェラーゼの不定形凝集体の形成も抑制することが分かり、幅広い蛋白質凝集抑制活性が示された。③ Ca2+存在下におけるD76N β2-m線維形成において、SAPが反応初期では線維形成を抑制し、反応後期では線維形成を促進することを明らかにし、SAPの線維形成に対する抑制および促進効果を1つの実験系で捉えることに成功した。以上の結果から、CRPとSAPはともに細胞外シャペロンとして機能し、アミロイド線維形成を始めとする蛋白質の異常凝集を抑制する一方、一度線維が形成されるとSAPは線維と結合し、線維を安定化することで線維形成を促進するという2面性を持つことを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
平成28年度の中心研究計画である「変異型 β2-m(D76N)線維形成を促進・抑制する細胞外マトリクス分子や細胞外シャペロンの探索と分子機構解析」に関し、① CRPとSAPが、AβおよびD76N β2-mのアミロイド線維形成を、濃度依存的かつsubstoichiometricに抑制することを明らかにした。② SAPは、線維形成のみならずグルタチオン-S-トランスフェラーゼの不定形凝集体の形成も抑制することが分かり、幅広い蛋白質凝集抑制活性が示された。③ Ca2+存在下におけるD76N β2-m線維形成において、SAPが反応初期では線維形成を抑制し、反応後期では線維形成を促進することを明らかにし、SAPの線維形成に対する抑制および促進効果を1つの実験系で捉えることに成功した。以上の結果から、CRPとSAPはともに細胞外シャペロンとして機能し、アミロイド線維形成を始めとする蛋白質の異常凝集を抑制する一方、一度線維が形成されるとSAPは線維と結合し、線維を安定化することで線維形成を促進するという2面性を持つことを明らかにした。以上の成果をScientific Reportsに報告した。「ヒト変異型 β2-m(D76N)トランスジェニックマウスの作成と繁殖」に関してもおおむね順調に進行している。
引き続き①変異型β2-m(D76N)線維形成を促進・抑制する細胞外マトリクス分子や細胞外シャペロンの探索と分子機構解析、②ヒト変異型β2-m(D76N)トランスジェニックマウスの作成と繁殖を推進すると共に、③ヒト野生型β2-mトランスジェニックマウスを用いたアミロイドーシス発症促進実験、④β2-mアミロイド線維の細胞傷害機構解析、⑤β2-m線維形成を促進する生体分子群の探索、⑥モデルマウスを用いた生体分子の機能及び臓器特異的アミロイド沈着機構解明、⑦β2-mアミロイド沈着をもたらす細胞外マトリクス環境の臨床病理学的解析、および ⑧β2-mアミロイド線維形成阻害・脱凝集をもたらす有機化合物の探索を行い、ヒトアミロイドーシスに共通する発症機構や治療戦略の作業モデルを提案する。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)
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