研究課題/領域番号 |
16H05170
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
内木 宏延 福井大学, 学術研究院医学系部門, 教授 (10227704)
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研究分担者 |
樋口 京一 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (20173156)
長谷川 一浩 福井大学, 学術研究院医学系部門, 助教 (60324159)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | アミロイドーシス / アミロイド線維 / β2-ミクログロブリン / 細胞外シャペロン / 血清アミロイドP成分 / C反応性蛋白質 / 細胞傷害 / トランスジェニックマウス |
研究実績の概要 |
本研究は、β2-ミクログロブリン(β2-m)アミロイドーシス発症の分子機構を、各種実験系を有機的に組み合わせ総合的に解明する。具体的に、① 種々の生体分子がβ2-mアミロイド線維形成を促進・抑制する分子機構、特に細胞外シャペロンのβ2-m線維形成抑制機構解明、② β2-m線維による細胞・組織傷害機構解明、③ β2-m線維形成・沈着を阻害する有機化合物探索、④ ヒトアミロイドーシスに共通する発症機構や治療戦略と共に、アミロイド沈着の臓器特異性を説明する作業モデルの提案、の4点を目指す。 平成30年度は、以下の3項目を推進した。(i) 目的①に関し、透析アミロイドーシス患者より得られた手術標本を、プロテオーム解析、各種抗体を用いた免疫組織化学染色により検討した。その結果、プロテオグリカンのSLRPがβ2-mアミロイドと共沈着し、SLRPのコア蛋白質がβ2-mアミロイド線維形成、沈着を促進する可能性を示し、現在論文作成中である。(ii) 目的①④に関連し、脳血管アミロイド症患者より得られた手術標本のプロテオーム解析を行い、細胞外シャペロンのクラステリン、apoEがAβアミロイドと共沈着していることを明らかにした。また、独自の試験管内実験より、これらのシャペロン分子がAβアミロイド線維形成を阻害することを明らかにした。これらのシャペロン分子はβ2-mアミロイドとも共沈着しており、ヒトアミロイドーシスに共通するシャペロン分子として機能する可能性を示し、論文発表した。(iii) 変異型β2-m (D76N) トランスジェニックマウスの開発を昨年度に引き続き行った。作成した5系統のマウスをヘミ接合体で維持し、18か月齢、24か月齢で組織学的に検討したが、明らかなアミロイド沈着は確認できなかった。現在2系統でトランスジーンのホモ化が完了し、これらを維持しアミロイド自然沈着の有無を検証する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記で述べたとおり、(i) SLRPsのコア蛋白質がβ2-mアミロイド線維形成、沈着を促進している可能性を示した。(ii) 細胞外シャペロンのクラステリン、アポリポ蛋白質Eが、脳血管アミロイド症、β2-mアミロイドーシスを始めとするヒトアミロイドーシスに共通する線維形成・沈着抑制分子として機能する可能性を示し、論文発表した。以上の成果より、上記目的①④は順調に進展していると判断した。一方、変異型β2-m (D76N) トランスジェニックマウスの開発には成功したが、未だβ2-mアミロイドの沈着を確認できておらず、計画全体としておおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き①変異型β2-m(D76N)線維形成を促進・抑制する細胞外マトリクス分子や細胞外シャペロンの探索と分子機構解析、②ヒト変異型β2-m(D76N)トラン スジェニックマウスの作成と繁殖を推進すると共に、③ヒト野生型β2-mトランスジェニックマウスを用いたアミロイドーシス発症促進実験、④β2-mアミロイド 線維の細胞傷害機構解析、⑤β2-m線維形成を促進する生体分子群の探索、⑥モデルマウスを用いた生体分子の機能及び臓器特異的アミロイド沈着機構解明、⑦β 2-mアミロイド沈着をもたらす細胞外マトリクス環境の臨床病理学的解析、および⑧β2-mアミロイド線維形成阻害・脱凝集をもたらす有機化合物の探索を行い、 ヒトアミロイドーシスに共通する発症機構や治療戦略の作業モデルを提案する。
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