研究課題
本研究は、β2-ミクログロブリン(β2-m)アミロイドーシス発症の分子機構を、各種実験系を有機的に組み合わせ総合的に解明する。具体的に、①種々の生体分子がβ2-mアミロイド線維形成を促進・抑制する分子機構、特に細胞外シャペロンのβ2-m線維形成抑制機構解明、② β2-m線維による細胞・組織傷害機構解明、③ β2-m線維形成・沈着を阻害する有機化合物探索、④ ヒトアミロイドーシスに共通する発症機構や治療戦略と共に、アミロイド沈着の臓器特異性を説明する作業モデルの提案、の4点を目指す。令和元年度は以下の3項目を推進した。(i) 目的①に関し、生体分子のポリリン酸が、数μMの生理的濃度で、中性pHにおけるβ2-m線維形成を促進することを見出し、論文発表した。またその分子機構として、ポリリン酸が、天然構造の崩れたβ2-m分子表面の水分子と結合しこれを奪うことにより、水和面積の小さいアミロイド線維形成に向かう反応を促進することを見出した。(ii) 目的④に関連し、β2-mアミロイドーシスを含ヒトアミロイドーシスに共通する発症機構、すなわちアミロイド前駆蛋白質の部分的アンフォールディングを前提とするアミロイド線維形成・沈着機構(重合核依存性重合モデル)を提案し、これを踏まえた各病型の最新治療を紹介する総説を執筆した。(iii) 変異型β2-m (D76N) トランスジェニックマウスの開発を昨年度に引き続き行った。作成した5系統のコンジェニック化が完了し、2系統(Tg69とTg82)ではトランスジーンのホモ化が完了した。現在、Tg82系統13か月齢~17か月齢の雌雄マウスを屠殺し、アミロイド沈着の有無を検討している。また、内在性B2m遺伝子ノックアウトヘテロマウスをTg69, Tg82系統マウスと交配し、内在性B2m-KO/hB2M-D76ダブルミュータントマウスの作製を進めている。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (3件) 備考 (1件)
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