研究課題
本研究では、肥満の脂肪組織と非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の肝臓において、CLS(crown-like structure)を起点として組織リモデリングが生じていることを証明し、細胞間相互作用による代謝性組織リモデリングの分子機構と病態生理的意義の解明を目指している。本年度は、肝臓CLSに特異的な分子メカニズムと、抗糖尿病薬のDPP-4阻害剤が代謝性組織リモデリングに及ぼす効果の解明に取り組んだ。DPP-4阻害剤は現在最も広く使用されている抗糖尿病薬で、血糖低下作用に加えて、肝臓における抗脂肪肝効果など多面的な作用が報告されている。我々は既に、遺伝性肥満を呈するメラノコルチン4型受容体(MC4R)欠損マウスに高脂肪食を負荷することにより、肥満やインスリン抵抗性を背景として、脂肪肝、NASH、肝細胞癌を経時的に発症するNASH・肝細胞癌モデルを確立した。そこで、DPP-4阻害剤をMC4R欠損マウスに投与したところ、予想に反して血糖値や脂肪肝の改善効果が認められなかった。この時、血中GLP-1活性やインスリン値は上昇したが、MC4R欠損マウスの強いインスリン抵抗性のためと考えられる。一方、肝臓CLSは同程度に形成されたものの、炎症や線維化は顕著に抑制された。この機序として、死細胞に応答するマクロファージの活性をGLP-1が抑制した可能性を考えている。さらに1年間の長期投与により、肝癌の発症が有意に抑制されることを見出した。さらに、肝臓CLSに特異的な分子メカニズムとして、死細胞センサーXや貪食制御分子Yに着目して検討を行っている。具体的には、これらの遺伝子欠損マウスの骨髄をMC4R欠損マウスに移植し、NASH発症に及ぼす影響を検討している。CLSにおける死細胞認識機構や死細胞クリアランスの重要性が示唆されるデータを予備的に得ており、詳細なメカニズム解明に繋げたい。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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