研究課題
本研究ではこれまで申請者らが開発した細胞分離技術やレポーター遺伝子群を活用し、MSCの未分化性維持や分化の方向決定において、Wnt/Notchシグナルがもたらす分子機構を体系的に解明することによって、幹細胞・前駆細胞・成熟細胞のふるまい(未分化性維持、分化の方向性決定)をコントロールするメカニズムをin vivo・in vitro両面から理解する試みを行っている。今年度は下記2点につき検討を行った目的①:高純度未分化MSCで特異的に発現する遺伝子FZD5およびNotch2の機能解析により、未分化性維持機構を明らかにする。成果①:本年度はFZD5およびNotch2の強制発現およびshRNAによるノックダウンにより、未分化MSCの細胞増殖・分化におけるそれぞれの遺伝子について解析を行った。その結果、FZD5は非古典経路を活性化することによって細胞老化を抑制すること(Harada et al. 投稿中)、Notch2は低酸素条件下で発現が上昇し、細胞増殖を誘導することが明らかになった(Sato et al. PlosOne 2016)。目的②:MSCとその細胞系譜にある子孫細胞の細胞運命をトレースする目的で、特異的遺伝子発現調節領域を用いたレポーター遺伝子導入マウスを作成する。成果②:本年度はFZD5遺伝子座に蛍光タンパク遺伝子を導入し、ノックインベクターの作成が完了しており、現在は発現のチェック等を行っている。
2: おおむね順調に進展している
平成28年度の研究計画は以下の通りである1) Notch2およびFzd5の発現抑制によりMSCの自己複製能が著しく阻害されることが明らかになっている。2) Notch2および Fzd5-floxマウス(いずれも入手済)に対しMSC特異的にCreを発現させることで、Notch/WntシグナルがMSCに与える影響の検討を行っている。3) Fzd5-KIマウスによる細胞運命トレースについては現在、KIマウスの作成準備中である4) LepR-Cre、Prx1-CreマウスとCAG-CAT-GFPマウスと交配することによって細胞運命のトレーシングを行っている。以上のことから概ね研究計画どおりに順調に成果を上げていると判断した
現在までに基礎検討を行って得た知見を活かし、研究計画をすすめる。現状、おおむね計画通りに進行しており、大きな変更の必要はない。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件)
PLoS One.
巻: 11 ページ: e0165946
10.1371