研究課題
制御性T細胞は、ヒトやマウスの末梢に存在する様々な免疫反応を抑制する重要な細胞で、IL-2 receptor-a chain(CD25)とFoxp3転写因子を発現し、末梢CD4+リンパ球の約5-10%を占めている。定常状態ではアナジーで増えないと考えられていた制御性T細胞が「樹状細胞により増える」事を私たちは世界に先駆けて発見した。樹状細胞はプロフェッショナルな抗原提示細胞であり、ナイーブなT細胞に抗原提示ができる唯一の細胞である。さらに、樹状細胞で増えた制御性T細胞が「自己免疫や移植片拒絶のみを特異的に抑制できる事もマウスのモデルを使用して見出した。本研究では、これらの成果に基づき、自己免疫などの好ましくない免疫反応のみを抑える制御性T細胞療法の開発を目指して、ヒトの細胞を使用する。2年目である本年度も引き続き、ヒトの末梢血液から制御性T細胞、樹状細胞の採取方法を検討した。さらに、J.Immunolに論文も発表できた。引き続き、本研究を遂行し、日本発の安全で有効な制御性T細胞療法の開発に貢献する。
2: おおむね順調に進展している
昨年に引き続き、ヒトの末梢血液から単核球を分離し、制御性T細胞、樹状細胞を採取する条件を検討することができた。制御性T細胞の誘導は、CD4, Live dead, CD45RA, CD127, CD25と制御性T細胞特異的な転写因子であるFoxp3を同時に多色で染色し、flowcytometerで解析を行った。これらのマーカーを使用することで、抑制機能のある真のFoxp3陽性制御性T細胞と、抑制機能のないFoxp3陽性T細胞を区別することができた。樹状細胞も、当初はflowcytometerでsortingし末梢血液から直接採取する方法を使用したが、細胞の数や生存率に問題があったため、CD14+monocyteからGM-CSF+IL-4で培養で誘導する方法に切り替え、制御性T細胞の誘導条件の検討を続けている。マウスの系でも制御性T細胞を特異的に増やす樹状細胞のサブセットを報告することができた。(J.Immunol 2018)
重篤感染症や発癌を誘因しない安全な免疫抑制療法の開発をめざし、本研究で日本発の安全で有効な制御性T細胞療法の開発に貢献するために、これまで決定することができた条件を使用し、引き続き、ヒトの制御性T細胞による試験管内のsuppression assayの条件をアロのmixled leukocyte reactionにおいて検討する。さらには、増殖した制御性T細胞の様々な表現型の解析、TCRレパトア解析、制御性T細胞特異的なエピゲノム解析、マウスを利用した生体内における抑制機能の解析を行う。これまでマウスの制御性T細胞で確立してきたことをヒトの細胞に応用し、将来の制御性T細胞療法に貢献を目指す。
すべて 2018 2017 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
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http://www.med.nagoya-cu.ac.jp/immunol.dir/index.html