研究課題
生体は感染初期に菌の侵入を感知し、炎症や細胞死といった自然免疫応答を誘導することで、菌の感染を効果的に阻止する。特に細胞死誘導は感染により損傷を受けた細胞を病原細菌ごと取り除くことで感染拡大を阻止するため、生体防御機構として効果的である。前年度までに宿主の細胞死誘導機構に対する腸管病原菌の感染戦略として、エフェクターAによるネクロプトーシス抑制を明らかにした。今年度はそのネクロプトーシス阻害機構の解明を目的とした。赤痢菌感染時のネクロプトーシスシグナル因子であるRIP1、RIP3を検出したところ、野生株感染時にRIP1、RIP3タンパクが減少していることが認められた。このRIP1、RIP3のタンパク量減少はエフェクターA欠損株感染では認められない。また、エフェクターAは他の腸管病原菌であるEPEC、EHECにもホモログタンパクが保存されている。実際に、EPEC、EHECの野生株、エフェクターAホモログ遺伝子欠損株を感染させると、野生株感染時にRIP1、RIP3タンパクが減少していたが、エフェクターAホモログ欠損株感染では認められない。そこでエフェクターAによる直接的な関与を確認するため、293T細胞にエフェクターA遺伝子をtransfectionし、RIP1タンパク量を検出した。この結果、エフェクターA発現では、RIP1タンパク量の減少および分解産物が認められたことから、エフェクターA依存的なタンパク減少であることが示された。このエフェクターAホモログのアミノ酸配列相同性検索より、本エフェクターはプロテアーゼ活性を有することが明らかとなり、そのプロテアーゼ活性変異体発現株ではRIP1、RIP3の分解は生じず、また感染時のネクロプトーシス阻害も認められなかった。以上の結果より、腸管病原菌のエフェクターAホモログは自身のプロテアーゼ活性によりRIP1、RIP3を分解し、ネクロプトーシス誘導を阻害することで感染持続に寄与するといった感染戦略を明らかにした。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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