研究課題/領域番号 |
16H05187
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
松本 壮吉 新潟大学, 医歯学系, 教授 (30244073)
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研究分担者 |
阿戸 学 国立感染症研究所, 免疫部, 部長 (20392318)
田村 敏生 国立感染症研究所, ハンセン病研究センター 感染制御部, 室長 (40291306)
西山 晃史 新潟大学, 医歯学系, 講師 (80452069)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 結核 / 無症候感染 / ワクチン |
研究実績の概要 |
結核菌のすみかは人であり、無症候感染者の5-10%において、潜伏感染菌の再増殖が生じ、結核が発症する。したがって活動性結核に加え、潜在性結核に対処することが結核の制圧につながると代表者は考え、結核菌の潜伏感染機構を解析している。本研究では、これまでの研究成果を基に、継続して疾患の潜在化の機構解明を目指すとともに、結核の潜在化の維持や誘導による、新しい感染制御法を構築することを目的としている。 潜在化のメカニズム解析; 休眠結核菌は、分裂せずに長期間生存することができる。これは結核菌を含む抗酸菌に共通する特性で、潜伏感染菌の生存メカニズムでもある。静止期以降に、死滅しやすいMycobacterium smegmatisを分離した。早期死滅株より菌体蛋白質を採取し、二次元電気泳動法を行い発現量の比較を野生株と比較した。解析は、プロジェネシスソフトウエアにて行った結果、野生株と早期死滅菌の発現量解析で、511スポットで変化があることが分かった。 結核菌をC57BL/6マウスに噴霧感染させ、結核標準療法を模した投薬により、増殖菌を殺傷し、休眠―潜伏感染状態とした。経時的に、血清を採取し、休眠潜伏感染における主要な抗原を特定するため、各種結核菌抗原(PPD、ESAT6、CFP10、Antigen 85、MDP1等)に対する免疫応答を測定した。 結核菌の増殖抑制因子MDP1が、マウスやモルモット、さらに猿で、ワクチン効果を発揮することが明らかとなってきたが、より有効なワクチンの開発を指向し、再燃時にMDP1の制御を逃れ発現が亢進する抗原の中でワクチン効果のある抗原の同定を目指している(潜在化維持の発症抑止ワクチン)。これまでバイオインフォマティクと文献検索により、上記に記載した抗原以外に、10種類あまりの抗原性蛋白質を候補とした。それぞれの遺伝子クローニングと発現を現在進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
抗酸菌の長期生存に関わる可能性がある分子を特定した。結核菌感染マウスの投薬により、休眠―潜伏感染の系を作成し、主要結核菌抗原の免疫原性を解析している。有効な結核ワクチン開発を目指し、MDP1以外のワクチン抗原の調製と解析が進行している。このように、研究はおおむね順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
特定した抗酸菌の生存に関わる可能性がある分子について、発現量に違いが認められる(3倍以上)を特定し、トリプシンによるゲル内消化を行い、質量分析装置にて切断ペプチドの質量を決定する。次ぎに、データベースとの照合により、分子を特定する。データを元に機能を推測し、生化学的アプローチにより長期生存との関連を解析する。 投薬した結核菌感染マウスにおける、各種結核菌抗原に対する免疫応答を、継続して解析し、ワクチン効果や潜在化の維持・破綻(発症)に関わる、宿主応答と抗原の特定に努める。 ワクチン候補抗原の遺伝子クローニング、組み換え蛋白質の大腸菌での発現プラスミドの構築、各プラスミドで大腸菌を形質転換、各抗原の発現を行う。発現を確認後、精製を行い、各ワクチン候補抗原のワクチン効果を確認していく。
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