研究実績の概要 |
オートファジーは生理的な細胞内小器官の分解や、栄養飢餓時のアミノ酸供給源として機能しているが、宿主細胞内に侵入した菌は、細胞質に逃れる菌は選択性オートファジーによって認識される.この過程では、細菌がp62/NDP52などのアダプター分子を介してユビキチンと結合することで、オートファジーによって分解されているとされている.ところが、この菌体の排除に関わるオートファジーでは、菌の種類によって誘導されるオートファジーの様相が著しく異なることから、細胞内に、各菌を特異的に認識する機構が存在することが予測される.本研究では、菌体表層のユビキチン化に関わる部位の同定と宿主の新規ユビキチン化システムの同定を試みることで、細菌感染特異的なオートファジーの誘導・制御に関わる制御系を明らかとする.A群レンサ球菌の種特異的糖鎖合成系の酵素については、これまでのゲノム解析の結果から、糖鎖の合成そのものに関わる遺伝子群は、gacA, B, C, F, G, H, I, Kの8種類であることが分かっている.これらの8種の合成系の欠失変異体、および菌体表層の莢膜多糖の合成系であるhasA, B, Cの欠失変異体を作成し、各変異体を培養細胞に感染させ、経時的なユビキチンによる認識・オートファジーによる認識を共焦点レーザー顕微鏡により検討を行った.その結果,gacI変異体によってオートファゴソーム形成率の低下が認められた.この結果から,これまで考えられているアダプターモデル以外でも菌体表層の菌種特異的な糖鎖を認識してオートファゴソーム形成に導く経路の存在が推察される.
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