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2016 年度 実績報告書

宿主ユビキチンシステムを負に制御する細菌エフェクタータンパク質の解析

研究課題

研究課題/領域番号 16H05189
研究機関大阪大学

研究代表者

久堀 智子  大阪大学, 微生物病研究所, 特任講師(常勤) (20397657)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワードユビキチン / 脱ユビキチン化酵素 / レジオネラ / エフェクター / 細菌感染
研究実績の概要

病原細菌が宿主ユビキチンシステムを模擬して感染に有利な細胞内反応を引き起こす仕組みは、宿主ユビキチンシステムに対する正と負両面からの細菌による働きかけで成り立つと考えられる。近年の研究から、ユビキチンシステムを駆動する E3 ユビキチンリガーゼとしての活性を持つタンパク質が様々な病原細菌がコードするエフェクタータンパク質の中に存在すること、またその詳細な機能が明らかにされつつある。一方で、ユビキチンシステムを負に制御する主要な酵素である脱ユビキチン化酵素 (Deuniquitinase; DUB) については細菌タンパク質の中にまだほとんど見つかっていない。本研究課題では、極めて多彩なエフェクターレパートリーを持ち、重篤な肺炎を引き起こす病原細菌であるレジオネラから DUB を見つけ出すこと、そしてその機能や宿主感染における役割を明らかにすることを目的として研究を行っている。
本年度は、ゲノム解析からすでに申請者らが見出していた5つの DUB 候補タンパク質の中から、感染において重要な役割を果たすと考えられた一つのタンパク質 LotA について解析を行った。まず、 大腸菌発現系を使って LotA タンパク質精製を行った。精製したタンパク質と様々な結合様式を持つユビキチン鎖を用いた in virto の反応を試みた結果、LotA が DUB としての酵素活性を持つことが証明された。LotA を真核細胞に異所発現させた結果、細胞内のポリユビキチンレベルが大きく減弱することが確認された。レジオネラを宿主細胞に感染させたところ、細胞内でレジオネラを内包する液胞の周りに LotA が集積し、LotA の酵素活性依存的にユビキチンが液胞から除去されることがわかった。これらの結果から、LotA が細菌液胞上のユビキチンを除去する活性を持つことが明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

DUB 候補タンパク質の中で最も重要な働きをすると考えられた一つのタンパク質が、実際に DUB としての活性を持つことを実験的に証明することができた。また、感染細胞内で細菌を内包する液胞上のユビキチンは宿主の免疫機構のターゲットとなるため細菌にとっての不利益と考えられるが、そのユビキチンを除去する活性を、見出した DUB が持つことが示された。この結果は、細菌による宿主感染機構を説明する上で、宿主ユビキチンシステムへの操作が非常に重要であることを示す一例として、本研究が位置付けられることを意味する。初年度の成果としては、計画以上の進展であったと考える。

今後の研究の推進方策

見出された DUB タンパク質の機能をさらに詳細に調べるため、各種変異体の樹立、in vitro の酵素活性解析を行う他、レジオネラ感染における意義をさらに詳しく調べるため感染細胞内でのレジオネラ増殖への影響を詳細に解析する。また、液胞上への局在から考えられる脂質結合のメカニズムについての解析を行うことを計画している。
また他の DUB 候補タンパク質についても、大腸菌発現系の構築とタンパク質精製、機能解析を進める。これらのタンパク質については感染細胞内で特定のユビキチン化されたタンパク質がターゲットとなることが想定されるため、相互作用タンパク質の探索を進めてゆきたい。具体的には、真核細胞での発現系を構築し、プルダウン法で結合タンパク質を同定するか、または酵母ツーハイブリッド系による探索を試みる。相互作用タンパク質が同定されれば、ノックアウト系を導入するなどして該当タンパク質の細菌感染における働き、およびそのタンパク質に対するレジオネラ DUB の果たす役割を解析する予定である。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2017 2016 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Bacterial secretion system skews the fate of Legionella-containing vacuoles towards LC3-associated phagocytosis.2017

    • 著者名/発表者名
      Hubber A., Kubori T., Coban C., Matsuzawa T., Ogawa M., Kawabata T., Yoshimori T., and Nagai H.
    • 雑誌名

      Sci Rep.

      巻: 7 ページ: 44795

    • DOI

      10.1038/srep 44795.

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Isolation of the Dot/Icm Type IV Secretion System Core Complex from Legionella pneumophila for Negative Stain Electron Microscopy Studies2017

    • 著者名/発表者名
      Kubori T and Nagai H.
    • 雑誌名

      bio-protocol

      巻: 7 ページ: xxxx

    • DOI

      10.21769/BioProtoc.xxxx

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Life with bacterial secretion systems.2016

    • 著者名/発表者名
      Kubori T.
    • 雑誌名

      PLoS Pathog.

      巻: 12(8) ページ: e1005562.

    • DOI

      10.1371/journal.ppat.1005562

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 宿主オートファジー関連システムとレジオネラ2017

    • 著者名/発表者名
      久堀智子、Andree Hubber、Xuan Thanh Bui、永井宏樹
    • 学会等名
      第 90 回日本細菌学会総会
    • 発表場所
      仙台国際センター展示棟(宮城県、仙台市)
    • 年月日
      2017-03-19 – 2017-03-21
  • [学会発表] Manipulation of the host ubiquitin system by Legionella Deubiquitinases.2017

    • 著者名/発表者名
      Tomoko Kubori
    • 学会等名
      OIST workshop: Bacterial Flagella, Injectisome and Type III Secretion Systems
    • 発表場所
      沖縄科学技術大学院大学 Main Campus (沖縄県、国頭郡恩納村)
    • 年月日
      2017-03-01 – 2017-03-04
    • 国際学会
  • [学会発表] 病原細菌レジオネラによる宿主ユビキチンシステムの操作2017

    • 著者名/発表者名
      久堀智子
    • 学会等名
      新学術領域「運動超分子マシナリーが織りなす調和と多様性」 生体運動研究合同班会議
    • 発表場所
      神戸国際会議場 国際会議室 (兵庫県、神戸市)
    • 年月日
      2017-01-06 – 2017-01-08
  • [学会発表] Manipulation of the host ubiquitin system by Legionella Deubiquitinases.2016

    • 著者名/発表者名
      Tomoko Kubori and Hiroki Nagai
    • 学会等名
      T4SS2016: Type IV secretion in Gram-Nagative and Gram-Positive Bacteria
    • 発表場所
      Beilngries, GERMANY
    • 年月日
      2016-12-08 – 2016-12-12
    • 国際学会
  • [学会発表] 病原因子分泌系を介した細菌と宿主細胞の相互作用2016

    • 著者名/発表者名
      久堀智子
    • 学会等名
      東京工業大学 Cell Biology Unit 第4回コロキウム
    • 発表場所
      東京工業大学すずかけ台キャンパス(神奈川県、横浜市)
    • 年月日
      2016-10-21
    • 招待講演
  • [学会発表] Manipulation of the host ubiquitin system by Legionella Deubiquitinases.2016

    • 著者名/発表者名
      Tomoko Kubori and Hiroki Nagai
    • 学会等名
      第 15 回 あわじしま感染症・免疫フォーラム
    • 発表場所
      淡路夢舞台国際会議場(兵庫県、淡路市)
    • 年月日
      2016-09-06 – 2016-09-09
    • 国際学会
  • [学会発表] Manipulation of the host ubiquitin system by Legionella Deubiquitinases.2016

    • 著者名/発表者名
      久堀智子
    • 学会等名
      新学術領域「運動超分子マシナリーが織りなす調和と多様性」 第 4 回領域全体会議
    • 発表場所
      長崎大学良順会館(長崎県、長崎市)
    • 年月日
      2016-06-08 – 2016-06-10
  • [備考] Nagai Lab

    • URL

      http://nagailab.biken.osaka-u.ac.jp/

URL: 

公開日: 2018-01-16  

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