病原細菌が宿主ユビキチン系を操作して感染に有利な状況を作り出す仕組みについての分子基盤を確立するため、研究代表者らが見出した病原細菌レジオネラがエフェクタータンパク質として持つ5つの脱ユビキチン化酵素 (DUB) 候補タンパク質についての解析を進めてきた。前年度までにそのうちの1つのタンパク質 LotA について、2つの独立した酵素活性部位を持つ類まれな DUB であることを in vitro 反応系及び感染細胞内で確認し、LotA が細胞内でレジオネラを内包する液胞上のユビキチンを除去する作用があることを見出した。さらに、他のレジオネラ E3 ユビキチンリガーゼとの機能的なリンクの上に細菌の細胞内増殖に寄与していることを明らかにした。 上記の結果を受け、本年度はこのタンパク質の持つ2つの酵素活性残基の役割分担の意義について調べるため、ユビチキン鎖結合様式に基づく反応の違いについて感染条件下での解析を行った。また、残る4つの DUB 候補タンパク質についても解析を進め、そのうちの1つのタンパク質 X が特定のユビキチン鎖結合様式に対して切断活性を持つことを明らかにした。真核細胞内発現系、及び X の野生型及び活性変異型を発現するレジオネラを細胞に感染させることで、タンパク質 X が切断する宿主細胞内ユビキチン修飾タンパク質の同定にも成功した。これらの結果から、レジオネラエフェクタータンパク質 X はレジオネラが細胞内増殖を果たす上で重要な役割を持つ増殖ニッチとしての液胞の構築のための小胞輸送の制御に関わることが明らかとなった(投稿準備中)。
|