研究課題/領域番号 |
16H05193
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
一戸 猛志 東京大学, 医科学研究所, 准教授 (10571820)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | インフルエンザウイルス |
研究実績の概要 |
4 種類の抗生物質(ネオマイシン、アンピシリン、バンコマイシン、メトロニダゾール)処理をしたマウスでは、インフルエンザウイルス感染後の肺のCTL応答に低下が認められることを確認できた。また通常の水を飲ませていたマウスと4種類の抗生物質を飲ませたマウスに、500, 250, 125 pfuのA/PR8インフルエンザウイルスを経鼻的に感染させた場合、4種類の抗生物質を飲ませたマウスでは、インフルエンザウイルス感染後の生存率が低下することを確認できた。ネオマイシン単独を4 週間飲ませた場合、インフルエンザウイルス特異的なCTL 応答にばらつきが認められた。CTL 応答の高いマウスをhigh responders、CTL 応答の低いマウスをlow responders として、両者のマウスに腸内細菌叢の違いを解析した。具体的には、ネオマイシン単独を4週間飲ませた後、非致死量のインフルエンザウイルスを感染させた。感染10日目の肺を採材すると同時に、それぞれのマウスの盲腸をサンプリングし、冷凍保存した。糞便懸濁液をガラスビーズを用いて粉砕し、バクテリアDNAを抽出した。今後、high responders/low respondersそれぞれの腸内細菌叢の割合に変化があるか、またhigh respondersの腸内細菌には存在していて、low respondersには存在しない腸内細菌が存在するかを、次世代シークエンサーを用いた16S rRNA解析を行っていく予定である。さらに4 種類の抗生物質を飲ませたマウスで特異的に割合が増加していた腸内細菌を特定し、ATCCから菌株を購入できたので、これらを無菌マウスへ移植した際のウイルス特異的な肺のCTL応答についても解析していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
4 種類の抗生物質(ネオマイシン、アンピシリン、バンコマイシン、メトロニダゾール)処理をしたマウスでは、インフルエンザウイルス感染後の肺のCTL応答に低下が認められることを確認できた。また通常の水を飲ませていたマウスと4種類の抗生物質を飲ませたマウスに、500, 250, 125 pfuのA/PR8インフルエンザウイルスを経鼻的に感染させた場合、4種類の抗生物質を飲ませたマウスでは、インフルエンザウイルス感染後の生存率が低下することを確認できた。ネオマイシン単独を4 週間飲ませた場合、インフルエンザウイルス特異的なCTL 応答にばらつきが認められた。CTL 応答の高いマウスをhigh responders、CTL 応答の低いマウスをlow responders として、両者のマウスに腸内細菌叢の違いを解析した。具体的には、ネオマイシン単独を4週間飲ませた後、非致死量のインフルエンザウイルスを感染させた。感染10日目の肺を採材すると同時に、それぞれのマウスの盲腸をサンプリングし、冷凍保存した。糞便懸濁液をガラスビーズを用いて粉砕し、バクテリアDNAを抽出した。今後、high responders/low respondersそれぞれの腸内細菌叢の割合に変化があるか、またhigh respondersの腸内細菌には存在していて、low respondersには存在しない腸内細菌が存在するかを、次世代シークエンサーを用いた16S rRNA解析を行っていく予定である。さらに4 種類の抗生物質を飲ませたマウスで特異的に割合が増加していた腸内細菌を特定し、ATCCから菌株を購入できたので、これらを無菌マウスへ移植した際のウイルス特異的な肺のCTL応答についても解析していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
申請者らはこれまでに、抗生物質を処理したマウス(抗生物質マウス)では、インフルエンザウイルス感染後のウイルス特異的な免疫応答が減弱することを見出した。抗生物質マウスでは、ウイルス感染による肺でのIL-1beta の産生が低下していた。インフルエンザウイルス感染による肺でのIL-1beta の産生とIL-1R シグナルは、インフルエンザウイルス特異的な免疫応答の誘導に必要であるが、腸内細菌叢が距離的に遠く離れた肺へどのようにシグナルを伝達しているのかは不明である。腸管と肺をつなぐ因子を同定するため、SPF マウス、抗生物質マウス、無菌マウスの血液からmRNAを回収し、マイクロアレイ解析を行う。また各マウスの血清中のサイトカイン・ケモカインはLuminexを使用したマルチプレックスアッセイ(Millipore)またはELISA(eBioscience)を用いて解析し、SPF マウスの血液中に多く発現していて、抗生物質処理マウスまたは無菌マウスの血液中で低下しているサイトカイン・ケモカインを同定する。また生まれつき常在菌を持たない無菌マウスにおいても同様に、インフルエンザウイルス特異的免疫応答が減弱しているかを確認するために、C57BL/6無菌マウス(三協ラボサービス)とSPF マウスに非致死量のインフルエンザウイルス(A/PR8)を経鼻的に感染させて、感染7, 14, 21 日後の血中のウイルス特異的IgG, IgA 抗体価をELISA 法で、肺のウイルス特異的CTL をH-2Db Influenza NP Tetramer(MBL)による染色後のフローサイトメトリー解析で、肺胞洗浄液中ウイルス力価はMDCK 細胞を用いたプラークアッセイ法で測定する。
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