研究課題/領域番号 |
16H05194
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
塩田 達雄 大阪大学, 微生物病研究所, 教授 (00187329)
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研究分担者 |
明里 宏文 京都大学, 霊長類研究所, 教授 (20294671)
金子 新 京都大学, iPS細胞研究所, 准教授 (40361331)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | iPS細胞 / CD4 / アカゲザル |
研究実績の概要 |
iPS細胞から様々な組織が再生構築可能になっている。我々はこれまで血球系細胞の分化、なかでもT細胞の構築に取り組んできた結果、ヒトCD8陽性T細胞の再生に成功した。一方で、サルでの前臨床試験の必要性を鑑み、アカゲザルiPS細胞の樹立とマクロファージあるいはCD8陽性T細胞への分化誘導にも成功している。しかし、ヒトにおいてもアカゲザルにおいても、CD4陽性T細胞の再構築は出来ていない。本研究は、in vivoにおけるT細胞の選択分化が可能なマウスやアカゲザル個体への移植実験により、CD4陽性T細胞の誘導と定着を目的とする。平成28年度には、まずiPS細胞由来のT細胞が実験動物の個体内でどこまで生着できるか、の検討を行うため、検出のための標識として緑色蛍光蛋白質(GFP)をウイルスベクターにより、作製したiPS細胞に導入することを試みた。iPS細胞に導入した遺伝子が分化後に発現しなくなることが知られているため、種々検討した結果、ボルナウイルスベクターを用いてiPS細胞にGFP遺伝子を導入することに成功した。今後、樹立したiPS細胞から造血幹細胞を誘導し、アカゲザル等の実験動物に移植する予定である。また、HIV-1阻害因子TRIM5α遺伝子やHIV-1やSIV感染に必須なCCR5遺伝子をCRISPR/Cas9によるゲノム編集技術で人為的に破壊するために必要なプラスミドの構築を終了した。本研究はCD4陽性T細胞分化の分子機構解明という基礎的意義のみならず、臨床応用においてCD4陽性T細胞の再構築が可能となれば、CD4陽性T細胞の選択的減少を来すAIDSの治療や癌免疫へも応用可能となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、平成28年度中に、標識されたiPS細胞の血液幹細胞への分化誘導とサル個体への移植や、試験管内でiPS細胞からNotchリガンドを発現させたマウスのstromal cellの共培養にIL-7やFlt-3のリガンドを加えてCD4陽性CD8陽性の未成熟T細胞を得て、そのサル免疫不全ウイルス感染感受性を検討する予定であったが、iPS細胞への遺伝子導入法の検討に予想を遥かに越える時間を要してしまい、移植実験やCD4陽性CD8陽性の未成熟T細胞のサル免疫不全ウイルス感受性の検討は平成29年度にずれ込んでしまった。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度に行う予定であった標識されたiPS細胞の血液幹細胞への分化誘導とサル個体への移植や、試験管内でiPS細胞からNotchリガンドを発現させたマウスのstromal cellの共培養にIL-7やFlt-3のリガンドを加えてCD4陽性CD8陽性の未成熟T細胞を得て、そのサル免疫不全ウイルス感染感受性を検討する実験を行う。さらに平成28年度に作製したHIV-1阻害因子TRIM5α遺伝子やHIV-1やSIV感染に必須なCCR5遺伝子をCRISPR/Cas9によるゲノム編集技術で人為的に破壊するために必要なプラスミドを用いて、iPS細胞の遺伝子改変を行う。HIV-1阻害因子あるいはCCR5がノックダウンされたiPS細胞をSchmittらの方法でCD4陽性CD8陽性T細胞に分化させ、試験管内でHIV-1あるいはSIVを感染させて、HIV-1感染感受性が獲得されたか否か、SIV感染感受性が低下したか否かをそれぞれ検討する。
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