研究課題/領域番号 |
16H05195
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
末永 忠広 大阪大学, 微生物病研究所, 准教授 (20396675)
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研究分担者 |
荒瀬 尚 大阪大学, 微生物病研究所, 教授 (10261900)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ヘルペスウイルス / エントリー / 膜融合 / 糖鎖 |
研究実績の概要 |
8種あるヒトヘルペスウイルスの宿主細胞への侵入(エントリー)は、複数のウイルスエンベロープ分子gB、gH等と細胞の各々のレセプターとの結合・共役による膜融合を介する。我々は、単純ヘルペスウイルス(HSV)、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)のエントリーレセプターPILRα、NMHC-IIA、MAGを報告し、新規VZVエントリーレセプターVgBR、VgHRを同定解析中である。また、HSV、VZVの膜融合・エントリーに、ウイルス側の糖鎖が重要であることを見出した。さらに、ヘルペスウイルス6A型(HHV-6A)のエントリーを阻害する宿主細胞表面分子H6IRを発見した。本研究では、各ヘルペスウイルスの膜融合・エントリーの分子機構とともに、それに対抗し膜融合・エントリーを阻害する宿主細胞側の防御機構を明らかにする。 VgBR、VgHRはそれぞれVZV gB、gHと会合し、VZVの膜融合を誘導することによって、VZVのエントリーを可能にすることが明らかになった。HSV gBのレセプター分子のうちPILRα、MAGはgBとの結合に糖鎖が必要であることが明らかになったが、gB上の糖鎖に依存してトロピズムが変わる可能性を見出し解析を続けている。 H6IRによる膜融合・エントリー阻害機構を、HHV-6 glycoproteinsとCD46との相互作用によるHHV-6Aの膜融合及びHHV-6A感染におけるH6IRの阻害機構を解析していたが、H6IR以外でこの阻害機構に関与する宿主分子としてH6IR2をcloningした。H6IRのみならずH6IR2に関しての解析を下記の通り行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
HHV-6のH6IRを介した感染実験を様々な細胞で行った結果、当初の予想に反し、H6IRと同じ細胞に発現する分子H6IR2もHHV-6のglycoproteinsとCD46の結合を阻害することが明らかとなった。研究遂行上、HHV-6の感染機構の本質を見極めることが不可欠であることから、H6IR2に関しても膜融合アッセイを行い、また、H6IR2発現細胞、H6IR2欠損細胞を新たに樹立し、HHV-6感染実験を追加で実施する必要が生じた。H6IR2は、H6IRと同様にHHV-6Aの膜融合を阻害することを膜融合アッセイによって示した。また、HHV-6Aの感染は、H6IRだけでなくH6IR2発現細胞では阻害され、また、H6IR2欠損細胞では阻害作用は認めなかった。以上のことから、H6IR2はH6IRと同様に、CD46とHHV-6A glycoproteinsの結合によって誘発される膜融合とHHV-6Aのエントリーを阻害することが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
VgBR、VgHRを介したVZVエントリーメカニズムの解析に関しては、主にVZV glycoproteinの糖鎖、宿主側糖鎖の必要性、また感染における関与などの解析などを当初の予定通り遂行していく。 HSV gBの糖鎖修飾によるHSVのトロピズム解析は、糖鎖の種類によってどのようにエントリーする細胞、受容体が変わるのかを具体的に明らかにしつつ、糖鎖改変ウイルスを作成し培養細胞、あるいはマウスへの感染実験を試みる。 HHV-6A感染におけるH6IR及びH6IR2による感染阻害は、具体的にどのような分子メカニズムで行われているのかをCD46との競合実験などを行う。また、H6IR, H6IR2欠損細胞に、H6IR、H6IR2それぞれを再発現させることによって、感染阻害が回復するかどうかの解析を行う。
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