研究課題
1) RNA結合タンパク質MS2を活用したウイルスゲノムRNAの可視化と局在化の検証ウイルス構成因子である、カプシドタンパク質(Gag)およびウイルスゲノムRNA (vRNA)の細胞膜への輸送とHIV粒子へのパッケージング過程を詳細にモニタリングするための基盤研究ツールとして、vRNAのリアルタイムイメージング法の開発を行った。具体的には、バクテリオファージMS2結合配列をタンデムに24リピート挿入したHIV分子クローンを作製し、本システムを用いて、感染細胞内におけるvRNAの動態をGFP融合MS2タンパク質を用いて可視化した。共焦点レーザー走査型顕微鏡を用いたリアルタイムに解析により、vRNAは細胞質および感染細胞-非感染細胞接触面(virological synapse: VS)においてGagおよびAPCタンパク質と共局在することが観察された。2) トランスウェル3次元培養系を用いたウイルス構成因子の局在化に関与する宿主因子の探索HIVの細胞-細胞間感染の分子機構を詳細に理解するため、感染細胞-非感染細胞接触面へのvRNAおよびGagタンパク質の輸送や局在化に関与する宿主因子を探索した。この目的のため、トランスウェル3次元培養系を用いた偽足(pseudopodia)アッセイを構築した。本法は、8μmポアトランスウェルの上側のチャンバーにHIVを感染した細胞を播種し下側のチャンバーに遊走因子を添加することで細胞極性が生じ、細胞の先進部ではpseudopodiaがポア内まで伸長する。pseudopodiaにはアクチンが凝集しており、cell-to-cell感染系におけるVSとほぼ同様の構造が見られることが確認できた。 APCの発現を阻害すると、Gag-vRNAのpseudopodiaへの局在化が有意に減少した。
2: おおむね順調に進展している
HIVの細胞-細胞間伝播におけるウイルス受け渡しの場であるVirological synapse (VS) 様構造をトランスウェル3次元培養系を用いて立体的に再構築させることに成功した。また、vRNAの局在をMS2システムを用いてリアルタイムに検出することが出来た。これらの解析系を用いて、宿主因子APCがVirological synapseにおけるGag-vRNAの局在化と安定化を制御する可能性が示唆された。以上により、本研究課題の目的についてはほぼ達成できたと考えられる。
我々が新たに開発した解析系を用いて、HIVの細胞-細胞間感染を阻止する新たな宿主因子の同定を試みる。また、APCによるHIV構成因子のVSへの輸送や安定化の分子メカニズムについて解析するとともに、APCのGag結合領域を模倣したペプチドや化合物、さらにはAPCとGagの相互作用を抑制する化合物などを探索することで、ウイルス-宿主間相互作用を抑制する新しいタイプの治療薬開発へ展開する。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)
Nature Communications
巻: 8 ページ: 14259
10.1038/ncomms14259
Frontiers in Microbiology
巻: 7 ページ: 883
10.3389/fmicb.2016.00883