研究課題/領域番号 |
16H05198
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
梁 明秀 横浜市立大学, 医学研究科, 教授 (20363814)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | HIV / 宿主因子 / 細胞-細胞間感染 / プロテオミクス / 分子イメージング |
研究実績の概要 |
本研究課題では、我々が独自に開発した3次元細胞培養モデル系を用いて、HIVの細胞-細胞感染を再構築し、ウイルス構成因子の細胞内輸送やVirological Synapse(VS)への局在化をモニタリングできる実験系の構築を行う。また、上記の実験系を用いて、ウイルス伝播に関与する宿主因子を同定しその作用機序を明らかにすることで、新たな治療戦略の創出を目指す。平成29年度の研究成果は下記のとおりである。 1) HIV 細胞―細胞間感染を阻止するインターフェロン関連宿主因子の同定 当教室で独自に構築した、ISG(Interferon-stimulated genes)遺伝子ライブラリー (約500種類) を活用し、発現スクリーニングを実施した。具体的には、293T 細胞を用いてISG遺伝子を導入後、HIVカプシドタンパク質であるGagの局在と安定性について考察した。NanoBRET技術を用いたスクリーニングにより、ISG#530はGagの膜局在化と安定性を阻害することで、HIV産生を顕著に阻害した。現在、3次元トランスウェル培養系においてcell-to-cellウイルス伝播への役割や機能について解析中である。 2) 細胞-細胞間ウイルス感染系を標的とした新たなHIV感染阻止法の考案と開発 HIV GagおよびウイルスゲノムRNA (vRNA)の細胞膜への輸送とHIV粒子へのパッケージング過程をモニタリングできる解析ツールを開発した。具体的には、バクテリオファージMS2結合配列をタンデムに24リピート挿入したHIV分子クローンを用いて、感染細胞内におけるvRNAの動態をGFP融合MS2タンパク質を用いて可視化した。その結果、VSにおけるGagとvRNAの共局在が確認できた。また、上記システムをハイスループットすることで、HIV細胞-細胞間感染を阻害する薬剤スクリーニング系を構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
HIVの細胞-細胞間伝播におけるウイルス受け渡しの場であるVirological synapse (VS) 様構造を、トランスウェル3次元培養系を用いて立体的に再構築させることに成功した。また、バクテリオファージMS2結合配列を挿入したHIV分子クローンを用いて、感染細胞内におけるvRNAの動態を可視化することにも成功している。これらのモデル系および研究ツールを活用し、HIVの細胞-細胞間伝播を促進または阻止する宿主因子を複数同定し、その作用分子機構について解析を行った。また、上記システムを発展させ、ウイルスの細胞-細胞間感染を阻害する薬剤剤スクリーニング系を構築することができた。これらの解析系を用いて、宿主因子APCがHIVの細胞-細胞間伝播に必須の因子である可能性が示唆された。以上により、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
我々が新たに開発した解析系を用いて、HIVの細胞-細胞間感染を阻止する化合物を探索する。また、TAP (Tandem Affinity Purification) を用いたプロテオミクス解析を実施し、新たなGag前駆体蛋白質結合因子を探索する。コムギ無細胞タンパク質合成系を用いて、ビオチン付加宿主タンパク質を合成し、HIVタンパク質との相互作用をハイスループットに検出できるアッセイ系を、化学増幅型ルミネッセンスプロキシミティホモジニアスアッセイAlphaScreenを用いて構築する。これらのシステムを活用することで、ウイルス-宿主間相互作用を抑制する新しいタイプの治療薬開発に役立てる。
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