研究課題/領域番号 |
16H05200
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
清水 博之 国立感染症研究所, ウイルス第二部, 室長 (90270644)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | エンテロウイルス / エンテロウイルス71 / エンテロウイルスA71 / 手足口病 / 受容体 / PSGL-1 / 動物モデル |
研究実績の概要 |
エンテロウイルスA71(EV-A71)は、手足口病の主要な原因ウイルスであるとともに、小児を中心とした致死的EV71脳炎を含む重症中枢神経疾患発症に関与する。しかし、EV-A71感染における重症中枢神経疾患の発症機構は明らかにされておらず、重篤化を規定するウイルス側・宿主側因子は特定されていない。EV-A71カプシド蛋白質の特定のアミノ酸(VP1-145等)は、分離株間で多様性を有し、①PSGL-1受容体特異性、②マウスモデルにおける病原性、③中和抗原性エピトープ、④ヒトEV-A71感染重篤化への関与の可能性等、さまざまなウイルス表現型に関与する。我々は、「宿主におけるエンテロウイルス71カプシド適応変異と受容体特異性・病原性の変化[基盤研究B](平成25年~平成28年)」によるカニクイザル感染実験により、PSGL-1結合性を含む多様なウイルス学的性状および神経病原性を規定する特定のEV-A71カプシドアミノ酸(VP1-145等)は、感染個体内で速やかに変異し、quasi-speciesを生じることを明らかにした。本年度は、感染動物組織等から、培養細胞によるウイルス分離を経ずにEV-A71カプシド遺伝子を増幅し、次世代シークエンス解析により個体内変異およびquasi-speciesの出現を網羅的かつ定量的に解析するための条件検討を進めた。ランダムプライマーを用いた非特異的遺伝子増幅、および、高感度カプシド遺伝子増幅法であるECRA法(Arita, Shimizu, at al. JCM2015)等エンテロウイルス特異的プライマーを用いた方法による次世代シークエンス解析による検出感度や遺伝子解析精度を比較した。また、EV-A71感染マウスモデルの改良を図るため、ヒト受容体特異性を反映した機能の異なる複数のEV-A71受容体を発現したノックインマウスの作製を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々は、「宿主におけるエンテロウイルス71カプシド適応変異と受容体特異性・病原性の変化[基盤研究B](平成25年~平成28年)」によるカニクイザル感染実験により、PSGL-1結合性を含む多様なウイルス学的性状および神経病原性を規定する特定のEV-A71カプシドアミノ酸(VP1-145等)は、感染個体内で速やかに変異し、quasi-speciesを生じることを明らかにした (Kataoka, Shimizu, et al. PLOS Pathogens 2015)。 そのため、本年度は、感染動物組織等から、培養細胞によるウイルス分離を経ずにEV-A71カプシド遺伝子を増幅し、次世代シークエンス解析により個体内変異およびquasi-speciesの出現を網羅的かつ定量的に解析するための条件検討を進めた。ランダムプライマーを用いた非特異的遺伝子増幅、および、高感度カプシド遺伝子増幅法であるECRA法(Arita, Shimizu, at al. JCM2015)等エンテロウイルス特異的プライマーを用いた方法による次世代シークエンス解析による検出感度や遺伝子解析精度を比較した。今後、カニクイザルEV-A71感染個体内におけるウイルス変異およびquasi-species 出現について次世代シークエンスを用いた網羅的解析を進める。また、EV-A71感染マウスモデルの改良を図るため、ヒト受容体特異性を反映した機能の異なる複数のEV-A71受容体を発現したノックインマウスの作製を進めた。CRISPR/Cas9を用いES細胞内でEV-A71受容体遺伝子の相同組換えを起こし、ES細胞とレシピエント卵を代理母マウスに移植しキメラマウスを作製した。野生型マウスとの交配により、異なる複数のEV-A71受容体を単独あるいは同時に発現するノックインマウスを樹立する。
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今後の研究の推進方策 |
VP1-145等カプシド可変領域の分子進化により多様な表現型を示すEV-A71バリアントの個体内・個体間適応戦略の解析を進める。EV-A71ゲノム分子進化の過程で生じる多様な表現型を示すEV-A71バリアントの個体内・個体間適応戦略の解析を進めることにより、EV-A71による神経病原性発現機構の解明が期待できる。カプシドアミノ酸変異により規定されるウイルス学的多様性と中枢神経病原性発現の関連性の解明を目指す。具体的には以下の研究課題について検討を進めることを計画している。
1. 高感度ポリオウイルスカプシド遺伝子増幅法であるECRA法(Arita, Shimizu, at al. JCM2015)を応用し、感染動物組織等から、培養細胞によるウイルス分離を経ずにEV-A71カプシド遺伝子を増幅し、次世代シークエンス解析を行うための条件検討を進める。ランダムプライマーを用いた非特異的検出法とエンテロウイルス特異的、あるいはEV -A71特異的プライマーを用いた遺伝子増幅法について検出感度を比較し、次世代シークエンス解析の至適条件を検討する。 2. ヒトに近い動物モデルであるカニクイザルモデルを用いて、PSGL-1結合性EV-A71株(VP1-145Q等)の組織特異的ウイルス増殖、中枢神経病原性、感染個体内におけるウイルス変異およびquasi-species 等について解析する(前年度から継続)。PSGL-1依存性EV-A71感染機構の探索、EV -A71 variantによる病原性発現機構の解明を進める。 3. EV-A71感染マウスモデルの改良を図るため、ヒト受容体特異性を反映した、機能の異なる複数のEV-A71受容体を発現したノックインマウスの作製を進める(前年度から継続)。
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