SLEではステロイド剤と免疫抑制剤を併用することで短期生存率が著明に改善しているが特異性に乏しく,ステロイド長期投与による骨粗鬆症や感染症,動脈硬化性病変などは長期の生命予後,患者QOLを大きく低下させる。自己抗体のソースである汎B・活性化Bリンパ球を標的にした抗体療法の臨床試験が進められているが,リスク,ベネフィットのバランスに優れた薬剤の開発は成功していない。代表者らは自己抗体を高産生するSLE病原性プラズマセル(PC)特異的に発現変化する免疫抑制性受容体を探索し,リガンドが未同定のオーファン受容体LILRB4(B4)が未治療SLE患者PCに高発現することを見出した(特許出願中)。SLEでは生理的リガンド不足等のためにB4の本来の抑制機能が不全になっていると考えた。そこでB4の生理的リガンドを同定し,次にこれらのアゴニスティック活性をin vitroで,3年目はin vivoで評価することでB4の抑制機能を賦活するメソッドを開発し,病原性PC特異的な,革新的SLE治療剤開発に結びつける計画を立案した。平成30年度はB4の生理的リガンドを発現する細胞を同定し,さらにその分子的実体をLC-MS/MS解析により同定した。さらにB4結合ドメインを決定した。マウスSLEモデルにおいてこのリガンドFc融合タンパク質およびB4阻害抗体の投与,B4欠損SLEモデルマウスにおける病態の解析を進め,とりわけSLEモデルマウスでB4が欠損することで病原性自己抗体産生細胞数が減少し,糸球体腎炎が緩和されることを見出した。
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