研究課題
H28年度までの研究により、脂質代謝のマスターレギュレーターであるSrebf1が肺線維芽細胞活性化に対して防御的に働いていることが明らかとなった。またH29年度の研究により、Srebf1の直接の上流因子であるLXRに対するアゴニストの投与により、ブレオマイシン・シリカ両肺線維症モデルにおいて、肺線維芽細胞でのSrebf1の発現が上昇し、線維芽細胞活性化が抑制され、肺線維化の進展が抑制されることが見出された。さらに、ブレオマイシンモデルにおけるLXRアゴニストの肺線維症治療効果はSrebf1ノックアウトマウスでは減弱することも見出された。さらに、Srebf1に対するChIP-seq解析により、活性化型Srebf1の過剰発現により発現変動が見られた遺伝子である、Cdkn1a, Ptges, Serpine1といった遺伝子のプロモーター領域とSrebf1が相互作用していることが見出された。さらに、理研の有田教授との共同研究により、LXR/RXR複合体のリガンドの一つであるレチノール類がブレオマイシン・シリカ線維化肺の活性化線維芽細胞で減少していることも見出された。現在、本学生支援採択者の所属研究室において、新規の線維芽細胞特異的Cre発現ノックインマウスの作成に成功し、Srebf1の活性化に必須なタンパク質であるSCAPのfloxedマウスをC57BL/6と戻し交配している段階である。また、共同研究先ではSrebf1のアイソフォームであるSrebf1a, Srebf1cのfloxマウスが作成中であり、それらとの掛け合わせを通じてより詳細なLXR-Srebf1c axis下流の分子機構について解明する予定である。
2: おおむね順調に進展している
当初の研究計画において、新規ハブ転写因子による、急性・慢性・寛解という3つの肺線維芽細胞活性化スペクトルの制御機構、およびその肺線維症病態に対する意義の解明を目的として設定していた。H29年度までに、ハブ転写因子の一つであるSrebf1および、その上流因子であるLXRアゴニストの治療的投与が、 in vivoにおいて線維芽細胞の活性化、線維症病態の進展に対して防御的に働くこと、ハブ遺伝子として慢性的な肺線維芽細胞活性化スペクトルに含まれる線維化関連遺伝子群の発現変動を広範に抑制していることの解明に成功した。さらに、ChIP-seqプロトコルの最適化により、活性化肺線維芽細胞中においてSrebf1により制御されていた因子のうち、PtgesやCdkn1aのプロモーター部位とSrebf1が直接相互作用していることが見出された。さらに、線維芽細胞特異的なin vivo介入実験のため、新規線維芽細胞特異的GFP-Creノックインマウスの作出に成功した。これらの結果は、当初設定した目標を満たすものであることから、本研究は当初の計画通り、順調に進展していると考えられる。
H30年度は、当初の研究計画およびH29年度までに得られた結果に基づき、ハブ転写因子Srebf1のアイソフォームの違いによる、線維芽細胞活性化制御のより詳細な分子メカニズムを、肺線維芽細胞の養子移入系、Srebf1a, Srebf1a/1c, SCAP のfloxマウスと、新規線維芽細胞特異的Creマウスとをかけ合わせたDouble-Tgマウスを用いて検証する。また、リピドーム解析により明らかとなった、肺線維芽細胞内における脂質組成の変化の生理的意義についても、トランスクリプトームとのin silico複合解析により推定する。また、Runx1などの、その他のハブ遺伝子の線維芽細胞活性化に対する生理的意義についても解析を進める。
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件、 オープンアクセス 8件) 学会発表 (16件) (うち国際学会 6件、 招待講演 3件)
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