研究実績の概要 |
申請者は、これまでT細胞の活性化・分化における、転写因子E2Aと拮抗因子Id2, Id3による転写制御機構の解明を行ってきた。その過程で、T細胞と自然リンパ球の類似性に着目し、二つの異なるリンパ球の分化制御に疑問を持った。特に、T細胞の分化・活性化においてE2Aによる転写活性化が大きな機能を持つ一方、自然リンパ球の分化・活性化にId2が必須であることが知られている。そこでまずT細胞におけるE2Aの機能解析を行った。結果、E2Aと別のEタンパク質であるHEBがT細胞分化に必須であること、さらにその機能欠損により胸腺内で、異所性に自然リンパ球が分化することを発見した。特にE2Aは標的遺伝子のエンハンサー領域に結合し遺伝子発現プログラムを制御することから、クロマチンアクセシビリティを検定するため、ATAC-seq (Assay for Transposase-Accessible Chromatin using sequence) 解析を行い、全ゲノムにおけるエンハンサーレパトアを調べた。結果、T細胞分化を決定するNotch1レセプターや、CD3, pTaのエンハンサー領域のクロマチンアクセシビリティがE2Aにより維持されることを突き止めた。このことは、獲得免疫の中心であるT細胞と、自然免疫系リンパ球の分化の分岐点を規定する重要な分子機構であり、その存在と生物学的意義を世界で初めて提唱した。以上の内容は、免疫学分野のトップジャーナルである、Immunityに報告した(Miyazaki et al., Immunity 46, 818-834, 2017)。
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