研究実績の概要 |
2016-2018年度の3年間で、E-Id転写因子のバランス制御がT細胞の分化・活性化をどのように制御するのかについて研究を進めた。この3年間で、E蛋白質であるE2A/HEBが協調的に働き、T細胞系列への運命決定に必須であることを突き止めた。E2A/HEBの欠損リンパ前駆細胞では、胸腺内でのT細胞分化に著しい障害を認め、T細胞への分化系列が欠損していた。驚いたことに、E2A/HEB欠損マウスでは、胸腺内のT細胞分化が抑制される一方、代わりに異所性の自然リンパ球の分化を認めた。自然リンパ球は、T細胞と機能的に類似しており、興味深いことに転写因子も共有していることが報告されている。また自然リンパ球は、共通リンパ球前駆細胞(CLP)から分化し、転写因子Gata3, Tcf1, Bcl11bなど、T細胞分化で必要な転写因子も共有していることが報告されている。以上のことからも、自然リンパ球とT細胞の分化の分岐点は存在するのか?その制御はどうなっているかは、これまで全く解明されていなかった。 上述のように、E2A/HEB欠損により、本来、自然リンパ球が分化しない臓器で異所性に分化していることから、E蛋白質の活性がT細胞と自然リンパ球の分化を制御していることが世界で初めて提唱することができた。ATAC-seq法を用いたエンハンサー領域の解析から、E2A/HEBの転写制御は、T細胞への分化プログラムに必要なエンハンサーレパトア(Regulome)の維持に必須であることが明らかとなった。以上の発見は、2017年にImmunity誌にて報告した。
|