研究課題
病原体等に対する免疫記憶の形成は獲得免疫系の最大の特徴であり、ワクチンの原理でもあるが、その本態はよく分かっていない。記憶B細胞は免疫応答時に産生され、親和性成熟を経た抗原受容体を発現し長期生存するB細胞で、抗原再曝露により直ちに増殖し、抗体産生あるいは胚中心形成を行う(想起応答)。私たちは、後期胚中心B細胞と記憶B細胞に選択的に発現するIL-9受容体が、それらの増殖・分化に必要であること、そして、免疫応答時にIL-9を産生する細胞は記憶B細胞であることを見出した。よって、記憶B細胞の一部はIL-9を介して記憶B細胞自身の形成と想起応答を促進するエフェクター細胞(Bm9と命名)として働く可能性が考えられる。平成28年度は、記憶B細胞の想起応答を促進するIL-9の作用がBm9細胞によるものである可能性を証明するために、IL-9 欠損マウスを導入し、そのコロニーを樹立した。そして、IL-9 欠損マウスの骨髄とB細胞欠損マウス(μMTマウス)との混合骨髄キメラマウスを作製した。また、T細胞依存性抗原で免疫したマウスのIgG1+記憶B細胞を種々の細胞表面抗原およびIL-9に対する抗体で染色し、フローサイトメトリーで解析した。さらに、記憶B細胞と種々の点で類似している辺縁帯B細胞がIL-9受容体を発現していたことから、IL-9R欠損マウスにおけるT細胞非依存性免疫応答を解析したところ、IL-9R欠損マウスでは抗体産生が抑制されていた。
3: やや遅れている
IgG1+記憶B細胞の中で、IL-9を発現する細胞(Bm9)とそうでない細胞の違いをフローサイトメトリーで解析したが、両者で発現に明確な違いのあるの細胞表面抗原を見出せなかった。また、IL-9欠損マウスの作製がうまく行かず、代わりに海外の研究者から入手したため、IL-9欠損マウスのコロニーの樹立が予定より遅れた。
Bm9細胞の遺伝子発現プロファイルを解析するためにはBm9細胞の純化が必要である。そのために、CRISPR/Cas9法を用いて新たなIL-9レポーターマウスを迅速に作製する。また、記憶B細胞あるいはiMB細胞を40LB上で培養する際に、抗原や種々のサイトカイン・刺激因子を与え、IL-9の発現を増強するものを探索する。さらに、作製したIL-9 欠損マウスの骨髄とB細胞欠損マウス(μMTマウス)との混合骨髄キメラマウスをT細胞依存性抗原で免疫し、その想起応答を解析する。また、T細胞非依存性免疫応答におけるIL-9産生細胞を探索する。
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