研究課題
病原体等に対する免疫記憶の形成は獲得免疫系の最大の特徴であり、ワクチンの原理でもあるが、その本態はよく分かっていない。記憶B細胞は免疫応答時に産生され、親和性成熟を経た抗原受容体を発現し長期生存するB細胞で、抗原再曝露により直ちに増殖し、抗体産生あるいは胚中心形成を行う(リコール応答)。私たちは、記憶B細胞に選択的に発現するIL-9受容体(IL-9R)が、リコール応答における記憶B細胞の増殖・形質細胞への分化・抗体産生を促進すること、そして、リコール応答時にIL-9を産生する主な細胞は記憶B細胞であることを見出した。さらに、記憶B細胞が産生したIL-9は記憶B細胞上のICOSリガンドの発現を抑制し、それにより記憶Tヘルパー細胞の活性化を抑制することによって、記憶B細胞からの胚中心の形成を抑制する機能ももっていることを見出した。よって、記憶B細胞の一部はIL-9を介して記憶B細胞自身のリコール応答を制御するエフェクター記憶B細胞(Bm9と呼ぶ)と考えられた。一方、別の研究グループから、一次免疫応答初期に濾胞Tヘルパー(TFH)細胞がIL-9を産生し、記憶B細胞の形成を促進していると報告した。しかし私達は、IL-9R欠損マウスと正常マウスとで免疫4週および10週後の記憶B細胞の数に有意差がないことを明らかにした。また、リコール応答において主に形質細胞に分化する記憶B細胞サブセット(PD-L2+ CD80+ 細胞)の割合にも差が無かった。さらに、免疫1週後のTFH細胞の中にIL-9を産生する細胞はほとんど検出できなかった。よって、記憶B細胞の形成にIL-9は必要ではないと考えられた。さらに、IL-9R欠損マウスにおいて2型T細胞非依存性(TI-II)抗原に対する抗体産生が抑制されていることを見出したが、TI-II免疫応答にはB細胞上のIL-9Rが必要ではないことが分かった。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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