本研究では、死亡前に行われる鎮静、特に持続的深い鎮静(continuous deep sedation)の倫理的妥当性が国際的に大きな問題とされていることをうけ、苦痛緩和の鎮静に関する多角的な調査研究を行った。研究は以下の研究に分かれている。研究1:コホート研究。終末期がん患者4500名を対象とした日本・台湾・韓国の国際共同研究。鎮静の頻度、意思決定過程、対象となっている苦痛、苦痛に対して行われた治療などを調査する。研究2:遺族調査。コホート研究のうち日本の患者の遺族を対象として、鎮静を受けた患者と受けなかった患者の遺族とで悲嘆に差があるかを調査する。研究3:国内の緩和ケア専門医を対象とした質問紙調査を行い、鎮静に対する考えを調査する。 緩和治療専門医を対象とした調査では、695名440名(69%)から回答を得た。過半数(57%)が「死亡まで継続して意識をなくす」ことを意図して実施している一方、10年前に比べて鎮静の法的妥当性についての懸念が増加していた。鎮静の適応は、生命予後、苦痛抵抗性、患者の意思を決定要因とする相応性で決めていたが、具体的な判断基準はなかった。 患者コホートは日本・韓国・台湾で2654名の登録が終了し、フォローアップに入っている。現時点までの鎮静の実施率は15%程度である。 2019年遺族調査を実施し、解析中である。
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