本年度は、前年度までに検討したオーファンドラッグの研究開発における患者参画のフレームワークや、研究に患者が主体的に貢献するポイントなどについて、国際会議や市民公開講座、研究会等での成果発表を実施した。また、患者が主体的に参加する研究に関する倫理審査のあり方についてのこれまでの知見を踏まえ、参加型ヘルステクノロジーアセスメントというアプローチの具体化、オーファンドラッグの社会的ライフサイクルの理論化、患者団体・患者支援組織の持続可能な組織運営に向けた教訓導出を行った。民間企業に対する案件について、患者団体などの市民社会組織や政府などの公共機関とは異なり、倫理的なプロセスについての迅速・簡便な処理の一方で、プライバシーや機密事項など特別なセキュリティの必要性という課題への対応について実践知を得た。さらに、希少疾患のみならず、障害、一般疾患もあわせた医療社会モデルのマッピングを行い、そのうえで希少疾患の立ち位置を検討することが重要であり、また、医療ガバナンスにおける患者視点に立脚したエビデンスであるPRO(Patient Reported Outcome)の取り入れも今後の研究として視野に入れることの意義を確認した。参加型実践の手法開発としては、未来ワークショップやエンターテイメントエデュケーションに関する研究会を開催するとともに、尾畑酒造・学校蔵やゆうべつ牛群管理サービスなどの訪問を通じて、社会変革や社会的学習のためのコミュニケーション戦略および多様なステイクホルダーとの応答的デザインの方法論の発展において新たな知見を得た。
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