研究課題
本研究の目標は、循環器分野における Precision Medicine を実践し、大規模データベースの発展的な活用へ先鞭をつけることにある。施設レベルでのベンチマーキングと並行し、さらにPCIの潜在的リスクとされる出血・腎障害の予測モデルの構築や検証を行い、その後に個別に同意書やカテーテル レポートに具体的な手技リスクの提示を行っていく。そして、最終年度に各種Quality Indicatorや臨床アウトカムの推移を提示し、その効果を定量化する。冠動脈疾患は Precision Medicine 実践のモデルとして適している。検証された診断や治療の選択肢が多岐に渡ると共に、疾患・手技ベースの大規模レジストリ等が多数存在し、さらにエンドポイントも客観的である。また、侵襲的介入も多く、リスク・ベネフィットの検証が非常に重要な分野でもある。ただ残念なことに、本邦において上記のような内容で研究を展開できる環境は限られている。本研究グループは既に関東で15施設をカバーする広範かつ精緻な研究ネットワークを構築しており、これまで我が国でも独自の成果を挙げてきている。これはnomenclature に基づいた項目を、専属のスタッフからトレーニングを受けた臨床コーディネイターが記録し、エンドポイントを正統的な統計学的手法を用いて評価してきたことによる。また、米国のNational Registryとも連携し、費用対効果分析をも行ってきており、これらの方法論にも精通している。
2: おおむね順調に進展している
データベースの入力項目の選定はデータベースの質を決定する上できわめて重要であるが、当研究班のデータベースは米国のNational Cardiovascular Data Registryと提携しているため米国のACCやAHAといった主要学会によって定められたグローバルスタンダードの客観性に富んだ項目を採用している。現在のところ既に、① 患者背景(危険因子を含む)、年齢など基本情報、② 術中のPCIの内容、その緊急度や補助手段、③ 予後、合併症の有無(出血、感染、神経障害、臓器不全等)に関する150-200項目が各症例に関して入力されているが、そのアップデートを行っていく予定である。さらにQuality Indicatorの内容をも網羅できるように改修する。
大まかな傾向が統計的な意味を持って見えてきた段階で項目別のガイドライン尊守率 や 出血や腎障害といったPCI潜在リスクに関して統計的な補正を行うための予測式を算出することとしている。従来の古典的なリスクモデルは、実際に現場で使うには不向きな項目を含んでおり(術中・術後所見など;Inohara, Kohsaka et al AJC 2015)、また 日本人独自の特徴(低いBMIや腎機能評価法;Kohsaka et al AHJ 2015)を十分に考慮しているとはいえず、こうした自前データでの検証作業を行わず無分別に予測式を使用することは現実的でない。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 5件、 査読あり 5件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 5件)
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