研究課題
αシヌクレイン凝集体・原線維形成はパーキンソン病、レビー小体型認知症における神経変性の引き金となる。凝集促進因子が治療標的になる。しかし、これまでに分子標的治療薬は開発されていない。私達は中脳ドパミン神経に高発現する脂肪酸結合蛋白質3(FABP3)がαシヌクレインと複合体を形成し、凝集体形成を促進することを発見した。さらに新規に合成した FABP3リガンド(阻害薬)が FABP3とαシヌクレインとの結合を阻害し、凝集体形成を完全に抑制することを予備実験で確認した。28年度はFABP3選択的リガンドの構造最適化について検討した。構造展開後、10種類の化合物について、1-anilinonapthalene-8-sulfonic acid (ANS) を用いて、結合親和性評価を行った。10種類の中からFABP3 に選択性・結合性の高い化合物1、化合物3を選択してLC-MS/MSで良好な脳移行性を確認した。次に、MPTP誘発パーキンソン病モデルマウスを用いて、薬効薬理試験を実施した。化合物1、化合物3ともに経口投与(1mg/kg )でMPTP誘発パーキンソン病運動機能障害および認知機能障害を改善することを確認した。さらに、PC12細胞にFABP3 とαシヌクレインを過剰発現し、αシヌクレイン凝集体形成に対して化合物1、化合物3は凝集抑制効果を示した。以上、FABP3 リガンドのリード化合物を選択して、薬効薬理のPOCを取得した。これらの結果をもとに、シヌクレイノパチー治療薬(PCT/JP2017/13742)として特許出願した。
1: 当初の計画以上に進展している
予定通りにシーズ化合物を創製することに成功した。レビー小体病になかで患者数の多いパーキンソン病モデルマウスで薬効を確認することができた。さらに、薬効と相関する薬物動態について重要な知見を得ることができた。また、PTC特許出願を完了した。
本研究ではレビー小体病の根本治療薬(疾患修飾薬)を目指している。本研究ではαシヌクレインの伝播のメカニズムとFABP3 の役割について追求する。1年目はFABP3リガンド(阻害薬)を用いて、その相互関係を明らかにすることができた。今後は、細胞系を用いて、αシヌクレイン細胞間伝播におけるFABP3 の役割について解析する。さらに、FABP3 によるαシヌクレイン凝集促進にはアラキドン酸などの脂質代謝物が関わっている。脳内炎症とαシヌクレイン凝集体形成における役割についても解析する。このことはレビー小体病に発症機構の解明に繋げる。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (13件) (うち国際共著 6件、 査読あり 13件) 学会発表 (32件) (うち国際学会 6件、 招待講演 1件) 産業財産権 (1件)
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