研究課題/領域番号 |
16H05219
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
福永 浩司 東北大学, 薬学研究科, 教授 (90136721)
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研究分担者 |
矢吹 悌 東北大学, 薬学研究科, 助教 (70756121)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | FABP3 / αシヌクレイン / シヌクレイノパチー |
研究実績の概要 |
私達は中脳ドパミン神経に高発現する脂肪酸結合蛋白質3(FABP3)がαシヌクレインと複合体を形成し,凝集体形成を促進することを見出した。29年度はFABP3選択的リガンドの構造最適化を行った。10種類の中からFABP3 に選択性・結合性の高い化合物1,化合物3を選択した。それぞれをマウスに経口投与し、LC-MS/MSで良好な脳移行性を確認した。次にヒト及びマウス由来のαシヌクレイン線維化物をマウス黒質に微量注入して,脳内伝播の評価系を確立した。マウス型αシヌクレイン注入マウスおよびヒト型αシヌクレイン注入マウスともに運動障害を示した。さらに、マウス型αシヌクレイン注入マウスでは注入後,4週間で認知機能障害が見られるのに対して,ヒト型αシヌクレイン注入マウスでは8週後に認知機能障害がみられ,同種のαシヌクレインの伝播が早いことが示唆された。現在はリン酸化αシヌクレインを指標にし、免疫組織化学染色法を用い伝播領域について検討している。化合物1を1月間経口投与(1mg/kg )して,マウス型αシヌクレイン脳内伝播に伴う認知機能障害に対する効果を検討した。化合物1の3週間の投与は認知機能障害をコントロールマウスと同程度に改善した。以上,FABP3 リガンドの構造最適化を行い,リード化合物を選択し,薬効薬理のPOCを取得した。これらの結果をもとに、シヌクレイノパチー治療薬(PCT/JP2017/13742)として特許出願した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
予定通りにシーズ化合物を創製することに成功した。レビー小体病になかで患者数の多いパーキンソン病モデルマウスとレビー小体病モデルマウスで薬効を確認することができた。薬効と相関する脳内以降性についてLC-MS/MSで証明した。また、PTC特許出願を完了した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究ではレビー小体病の根本治療薬(疾患修飾薬)を目指している。本研究ではαシヌクレインの伝播のメカニズムとFABP3 の役割について追求する。今後は、FABP3 欠損マウス由来の脳細胞を用いて、αシヌクレイン細胞間伝播におけるFABP3 の役割について解析する。さらに、FABP3 によるαシヌクレイン凝集促進にはアラキドン酸などの脂質代謝物が関わっている。脳内炎症とαシヌクレイン凝集体形成における役割についても解析する。FABP3 によるαシヌクレイン凝集促進の機序を解明することは,レビー小体病の疾患修飾治療薬の開発のみならず発症機構の解明に繋がる。
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