研究課題
肺動脈性肺高血圧症(PAH)は肺動脈血管平滑筋細胞の著明な増殖を特徴とする難治性疾患である。一方、プロリン異性化酵素(peptidyl prolyl isomerase; Pin1)は、細胞内シグナル分子(キナーゼ・転写因子等)内のphospho (p)-Ser/Thr-Pro配列を認識し、その標的分子のシス・トランス構造を変換することによりその分子活性を制御する。本研究では、PAHの進展にPin1がいかに関与するかを明らかにすることを目的としている。Pin1ノックアウトマウス(KO)および野生型(WT)のC57Bl6マウスに対して、低酸素チャンバーを用い酸素濃度10%の条件で3週間飼育した(KO-HおよびWT-H)。それぞれの対照群は室内気で飼育した(KO-NおよびWT-N)。低酸素飼育によりWTの右室収縮期圧は約1.5倍上昇しており、肺動脈圧上昇に伴い右室重量も有意に増加しており、低酸素飼育により肺高血圧の状態であることが明らかとなった。しかしながら、KOマウスでは、低酸素による右室圧の増加は有意に抑制されていた。また、直径50μmn未満の肺動脈壁厚は、KOにおいて有意に小であり、以上よりPin1欠損により肺高血圧になりにくいことが明らかになった。各群の肺を用いて、肺動脈血管平滑筋増殖に関与すると考えられるAktおよびERKの活性化をウェスタンブロット法により検討した。野生型マウス肺では低酸素によりリン酸化Akt, リン酸化ERKが増加していたが、KOマウス肺では、低酸素によるこれらの増加は抑制されていた。以上より、in vivoにおいて、低酸素誘発性肺高血圧の進展にPin1が関与し、その欠損により肺高血圧の進展は抑制されることが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
in vivoにおいてPin1が肺高血圧症の進展に関与し、そこにAkt, Erkの活性化が関与していることが明らかとなったことより、おおむね順調に進展していると判断される。
培養肺動脈血管平滑筋細胞細胞を用い、細胞増殖刺激に対するPin1が関与することを、Pin1阻害薬およびsiRNAを用いたPin1ノックダウンにより明らかにする。また、低酸素誘発性肺高血圧モデルに対し、Pin1阻害薬を投与し、肺高血圧の進展が抑制されるかを明らかにする。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 1件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 8件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件)
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