研究課題
本年度はひとaシヌクレインの遺伝子を標的とする核酸配列のスクリーニングを行った。具体的にはヒトaシヌクレインの遺伝子の発現を調節するアンチセンス核酸をエクソン中心にデザインした。その配列を、ヒトアストロサイトーマ由来U87MGでスクリーニングを行った。デザインした配列のうち、2つにおいて著明な遺伝子抑制効果を認めており、現在、ヒトaシヌクレイン過剰発現マウスモデルにて効果を検証中である。また筋緊張性ジストロフィーの遺伝子であるDMPKに対しても、最適化を行った。マウスDMPKを標的としてデザインした配列をHepa1-6においてスクリーニングを行った。また以前から使用しているDMPKに対する配列で、正常マウスにおいて複数回投与を行ったところ、Malat1に比べると遺伝子抑制効果は弱いが脳・脊髄での遺伝子抑制効果が見られた。更にヘテロ核酸のアンチセンス側の5' に蛍光を標識し、全身投与を行った。投与後数ポイントを設定し、適宜、脳および脊髄を回収した。その後、ホモジェナイズしてTECANにて蛍光を測定した。ヘテロ核酸では明らかに1本鎖核酸と比較して、蛍光輝度が高く遺伝子抑制効果を反映していると考えられた。一方で、in vivo confocalの結果よりヘテロ核酸は1本鎖核酸と比して血中滞留性が高く、血漿成分と脳実質への取り込み量について正確な測定方法の検討が必要と考えられた。また蛍光付き核酸投与後の1-6時間の脳では血管内皮に非常に高い取り込みが見られた。
2: おおむね順調に進展している
本年度は神経難病に対する配列の最適化を実施した。現時点で、遺伝子制御可能な配列は取得できていて、それを用いて研究を実施している。またそれらを動物に投与して、一部では既に結果が出ている。また脳への移行量に関しても、蛍光を用いたヘテロ核酸では脳への移行量の増加は確認でき、遺伝子抑制効果と相関すると考えられた。また形態学的に脳血管内皮への移行も確認している。
今年度も引き続き、動物モデルで末梢投与から中枢への遺伝子抑制効果を検討する。脳・脊髄へのヘテロ核酸移行メカニズムについては、いまだに不明である。その解明が、今後のヘテロ核酸の開発の方向性を決定づける大きな要素と考えらえる。そこでその解明の為に、ノックアウトマウスにてヘテロ核酸の中枢神経移行性が阻害されるかについて検討する。またヘテロ核酸はその構造ゆえに色々な修飾が可能である。現在、リガンドにはビタミンEを使用しているが、その他の脂肪酸等を検討して、脂溶性の程度と相関があるのか・効果が変動するのかを動物実験で検討する。またリガンドとcRNAの結合部位のリンカーを変更することにより、Ligand分子の可動性や切れにくさなどの加工が可能となるため、リンカーについてもさらに検証して、最適化を図る。また現在は人工核酸であるLNAを用いている。他の人工核酸でも同様の効果が期待できるか、検証する必要がある。他の入手可能な人工核酸でも同様効果を発揮するか検討を動物実験で行う。
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Organic & Biomolecular Chemistry
巻: 15 ページ: 8145~8152
10.1039/c7ob01874f