研究課題/領域番号 |
16H05225
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
山口 博之 北海道大学, 保健科学研究院, 教授 (40221650)
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研究分担者 |
中村 眞二 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40207882)
松尾 淳司 北海道大学, 保健科学研究院, 講師 (50359486)
大久保 寅彦 北海道大学, 保健科学研究院, 助教 (90762196)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | Chlamydia trachomatis / クラミジア / 膣スワブ / 低酸素 / 腸内細菌科細菌 / インドール / 菌叢 / メタボローム |
研究実績の概要 |
本邦における健康女性の子宮頸管部へのクラミジア(Chlamydia trachomatis)の感染率は、性的行動が活発な20歳台に限ってみると約10%と極めて高い。多くのケースは無症候性であり、無治療患者の約半数で、卵管へと上向性に感染は拡大し、骨盤内炎症性疾患(PID)を発症する。さらに20%程度で線維化に伴い卵管は閉塞し不妊となる。そこで本研究では、これまでの基盤研究を踏まえ、クラミジア感染に伴う不妊を未然に防ぐことを最終目的とし、クラミジア感染時に線維化を促進する菌側・宿主側因子と腟・尿・唾液からのPID診断バイオマーカーの探索を行ってきた。本年度は、昨年度の成果を踏まえ行った研究を通して、以下の成果を得た。 1. 膣スワブ検体の収集: 検体総数が626検体に達した。各検体のクラミジアの感染の有無、膣症の程度(Nugent Score)、乳酸菌数(リアルタイムPCR)を決定した。 2. 低酸素条件下でのクラミジア感染細胞の繊維化に関わる遺伝子の発現変化の網羅的な検討: RT2 Profiler PCRを用いて検討した結果、低酸素環境下(2%O2)では、クラミジア感染に伴い、3つの繊維化関連遺伝子(CTGF、SERPIN1、JUN)の発現が低下することを見つけた。 3. 膣検体の菌叢解析と培養: 昨年度の検討結果として、48検体について菌叢解析を行い膣症が認められなかった検体において、クラミジア陽性検体にて、有意に腸内細菌科細菌のOTU数が増加していたが、膣検体からの腸内細菌科細菌は培養できなかった。 4. インドール検出系の確立: 肛門経由で膣内に腸管で腸内細菌科細菌によって産生されたインドールそのものが混入することでクラミジアの生存性が高まると考えられたので、膣検体中のインドール量を測定するための検出系を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下の3つの成果が新たに得られたので、「おおむね順調に進展している」とした。 1. 低酸素条件下(2%O2)でのクラミジア感染細胞の繊維化に関わる遺伝子の発現変化の網羅的な検討した結果、クラミジア感染に伴い、3つの繊維化関連遺伝子(CTGF、SERPIN1、JUN)の発現が低下することを見つけた。 2. 昨年度の検討結果として、48検体について菌叢解析を行い膣症が認められなかった検体において、クラミジア陽性検体にて、有意に腸内細菌科細菌のOTU数が増加していたが、膣検体からの腸内細菌科細菌は培養できなかった。すなわちクラミジア感染者は、肛門経由で腸内細菌科細菌の強いフローがあることを見つけた。 3. 膣検体中のインドール量を測定するための検出系を確立した。
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今後の研究の推進方策 |
クラミジア感染時に線維化を促進する菌側・宿主側因子と腟・尿・唾液からのPID診断バイオマーカーを探索するたろに、最終年度は以下の検討を行う。 1. 網羅的検討にて絞り込んだ繊維化関連遺伝子(CTGF、SERPIN1、JUN)を強発現する細胞を確立し、低酸素と通常大気分圧下でクラミジア感染時に会合する分子を比較し同定する。 2. 低酸素環境下でのさまざまなクラミジア菌種の動態を可視化。 3. 膣症の程度別にクラミジア陽性陰性検体を各30検体ずつ選別し、メタボローム解析を行い、感染に伴い変化する代謝産物のプロファイリングを行う。 4. 収集した全検体スワブ中のインドール濃度の測定と比較。
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