研究課題/領域番号 |
16H05229
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
橋口 照人 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (70250917)
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研究分担者 |
村永 文学 鹿児島大学, 医歯学域医学部・歯学部附属病院, 講師 (00325812)
丸山 征郎 鹿児島大学, 医歯学総合研究科, 特任教授 (20082282)
山口 宗一 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 准教授 (20325814)
大山 陽子 鹿児島大学, 附属病院, 特任助教 (20583470)
竹之内 和則 鹿児島大学, 附属病院, 医員 (30646758)
宇都 由美子 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 准教授 (50223582)
清水 利昭 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 助教 (50468055)
原田 陽一郎 鹿児島大学, 医歯学総合研究科, 特任准教授 (80464147)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 血栓 / 血小板 / 赤血球 / 白血球 / プログラム細胞死 / ネクローシス / アポトーシス / NETosis |
研究実績の概要 |
同意書を取得した5名の閉塞性動脈硬化症症例の摘出血栓を免疫組織化学染色により、摘出血栓を構成する血球の細胞死の動態の観点から詳細に解析中である。摘出血栓を構成する血小板をapoptotic、necroticの2つのフェノタイプから、赤血球をeryptosisのフェノタイプから、そして好中球をapoptosis、necrosis、NETosisの3つのフェノタイプから解析を行ない、血球の細胞死の観点から摘出血栓の質の多様性について検討している。基礎病態ならびに投与されている抗血小板薬、抗凝固薬(ワーファリン、DOACs)の相違からくる摘出血栓の質の相違に着目して解析している。血小板の観察にあたっては、integrin αIIbβ3の活性化の確認とともにnecrotic plateletsについては、phosphatidylserine (PS)ならびに凝固第V因子の細胞膜上での高レベルの発現、(電顕の観察による)細胞膜のbleb形成を観察の主体としている。Annexin-VはPSを高発現する血小板 (necrotic platelets)に特異的に結合することが報告されており、また、apoptotic plateletsについては、低PS発現の血小板にも結合することが報告されているLactadherinによる染色ならびに血小板アポトーシスにおいて確認されている、抗アポトーシス分子 (Bcl-XL、Bcl-2)ならびに向アポトーシス分子 (Bak、Bax)の染色性を対比して検討中である。Eryptosisについては赤血球膜上のAnnexin-Vの結合性を検討している。好中球の観察は、TUNEL法ならびにPSのAnnexin-Vによる染色、細胞の形態によるapoptosis、necrosisの判別とともに、シトルリン化ヒストン染色によるNETosisの存在について検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
臨床病態生理学として、摘出血栓・塞栓を構成する血球細胞を細胞死のプロセスの観点から免疫組織化学的に解析して、血栓・塞栓に含まれる血球細胞のプログラム細胞死の多様性を明らかにして、血栓・塞栓の質の多様性として報告することを目的として検討を進めた。更に、より発展した抗血栓・塞栓療法開発の手かがりとして考察している。特に、抗血小板薬、抗凝固薬の内服症例からの摘出血栓については詳細に比較検討を加える。鹿児島大学病院検査部にて得られた検査情報は、電子カルテシステムとは別にデータ統合解析サーバーに統合され、任意の演算処理を可能とするとともにHIS (Hospital Information System)との連携を可能としている。血小板のapoptosisおよびeryptosisの解析結果を、検査情報と栄養、薬剤、バイタルサインを含めたHIS情報とのデータマイニング解析により、病態検査学としての多角的な視点から解析・評価を開始している。マウスによる統合的解析としてLPS投与によるマウスの敗血症モデルにおいて主要臓器の微小血栓における血小板、赤血球のプログラム細胞死のプロセスを好中球の細胞死とともに総合的に解析している。これまでの研究の発展として、血管新生・透過性作用の鍵分子であるVEGF-Aを免疫B細胞において約4倍過剰発現させたマウス(研究代表者ら, J Immunol . 2010)の観察より、赤血球代謝におけるeryptosisの関与による免疫系の修飾について検討中である。また、これまでの研究の発展として、血小板特異的VEGF-A発現マウスの解析により、血小板VEGF-Aがresting、activated、apoptotic、necrotic plateletsの形質に及ぼす影響を明らかにして、血小板に含まれる増殖因子と血小板のプログラム細胞死との関連を解析中である。
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今後の研究の推進方策 |
無核の細胞である血小板、赤血球の細胞死のプロセス、すなわち、activated、apoptotic、necrotic (super-activated) platelets、eryptosisの現象は、日常の検査室レベルの観察に到達していない。鹿児島大学病院検査部においては平成14年より検査情報を電子カルテとは別にデータ解析サーバーに統合して任意の演算処理を可能にするとともに、HIS (Hospital Information System)との連携を可能にしてきた。今後、医療情報との連携解析にデータマイニングの手法を取り入れ、①apoptotic plateletsおよびeryptotic erythrocytesが、炎症環境において栄養指標、薬剤等の医療情報および検査値と、どのように関連しているのか、②播種性血管内凝固症候群 (DIC)や臓器不全等の重篤な病態の予知・予後の判断としてのマーカーになり得るのか、③病態の進展あるいは回復のどの時点で最もダイナミックに関連するのか等を詳細に検討したいと考えている。基礎研究においては細胞死に関するこれまでの国内外の知見から、細胞死のプロセスが(apoptosisまたはnecrosisにより)周囲の免疫環境に影響していることに疑いの余地はない。一方、炎症病態における赤血球数の低下、血小板数の低下は貧血、あるいはDICの診断基準を満たさずとも日常臨床において観察(経験)される事象であるが、これらの観察への細胞死の視点からの病態学的考察は未熟である。今後の解析には、循環血液中のAnnexin-V、Lactadherinに陽性を示す、血小板、赤血球を、患者の年齢、性別を含む基本情報、栄養指標、薬剤等の医療情報と炎症の指標、骨髄の予備能、肝予備能、腎機能、凝固線溶系の動態等の検査情報から解析する予定である。
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