研究課題
本研究では、上皮間葉転換(EMT)誘導に着目し、様々な固形癌で、明確な診断基準となる腫瘍組織・血清を用いた新規診断法を確立することを目指している。そために、本年度は、以下の研究を行った。1.申請者らが見出したEMTに関係し、早期肺腺癌の予後とも関連がある1種類のタンパク質およびそのリン酸化に着目し、血清中での定量解析技術を検討した。その結果、血清中タンパク質濃度が低く、免疫沈降法とウエスタンブロッティング法を組み合わせた方法でのみ検出可能であることがわかった。また、このタンパク質は様々な翻訳後修飾を受け、複数のタンパク質フォームとして存在していること、健常者においても一部フォームは強く発現していることが明らかになった。また、大腸癌および胃癌組織を用いて、患者毎に癌部と非癌部、予後良好と不良群に分けて検討を行ったが、組織においても複数のフォームが確認され、さらには個人差が大きいことがわかった。2.申請者らが見出したEMTに関係する2種類のチロシンキナーゼ型レセプターについては、TGFβ刺激によりリガンド量が増加した結果、これらタンパク質のリン酸化が亢進する可能性が示唆された。3. 質量分析装置を用いたプロテオーム解析により、大腸癌および胃癌患者組織を用いて新たな診断マーカー候補タンパク質の探索を行った。その結果、新たなEMT関連タンパク質を見出すことができた。4.血清を用いた、新たなプロテオーム解析法の開発を遂行中である。
2: おおむね順調に進展している
本研究では、近年申請者らが見出したEMT誘導に関係し、早期肺腺癌の予後とも関連がある4種類のタンパク質リン酸化に着目した新規腫瘍診断法の確立を目指した研究を遂行している。しかし、様々な検討を行った結果、診断法確立には、当初予定よりも多くの時間を要することがわかった。そこで、これらタンパク質に着目した腫瘍診断法の確立と並行して、各タンパク質およびそのリン酸化が関与するEMT誘導メカニズムを明らかにし、その関連タンパク質群も新たな診断バイオマーカーとして活用する研究に着手した。また、本研究では、様々な固形癌の患者血清および組織などの、貴重な臨床検体を幅広く収集している。そこで、これら臨床検体を用いて、より明確な腫瘍診断基準となる、新たなEMT関連タンパク質を探索するプロテオーム解析研究にも着手し、EMT誘導との関連性や診断バイオマーカーとしての有用性の検討を開始している。
研究は、若干の方向転換を余儀なくされているが、申請者らが見出したEMT関連性タンパク質やそのリン酸化に着目した研究では、新たな成果が順調に得られている。また、臨床検体を用いたプロテオーム解析による新たなEMT関連タンパク質探索研究についても順調に進んでおり、現時点で大きな障壁は見られない。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (11件) (うち査読あり 11件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 6件、 招待講演 1件) 図書 (1件)
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