研究課題/領域番号 |
16H05230
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
木村 弥生 横浜市立大学, 先端医科学研究センター, 准教授 (80391936)
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研究分担者 |
大島 貴 横浜市立大学, 医学研究科, 客員教授 (10448665)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | プロテオミクス / 上皮間葉転換 / 診断法 / 癌 |
研究実績の概要 |
本研究では、上皮間葉転換(EMT)誘導に着目し、様々な固形癌で、明確な診断基準となる腫瘍組織・血清を用いた新規診断法を確立することを目指し、以下の研究を行った。 1. 血清診断バイオマーカーとしての有用性を検討するために、昨年度までに条件検討した測定法にて、EMT誘導関連タンパク質の血清中の濃度を調べた。胃癌、大腸癌、膵臓癌、肺癌患者血清や健常者血清を用いた結果、個人差が大きく、健常者での数値が高いなど血清診断バイオマーカーとしては利用できないことが判明した。 2.癌患者の予後診断が可能な、有用な血清診断バイオマーカーを開発するために、血清中のタンパク質を直接網羅的に解析する、新たな血清プロテオーム解析法(DIA法)の開発を行った。今年度は、その準備として、様々な分画法を活用して、血清中に含まれるタンパク質に由来するペプチドの質量データを蓄積した標準ヒト血清タンパク質スペクトルライブラリの構築を行った。 3.大腸癌組織と近接正常粘膜組織を用いたリン酸化プロテオーム解析により、癌部に特異的に高発現するリン酸化ペプチドを7種類見出した。その中で、EMTとの関連が示唆されている1種類のタンパク質について、mRNA発現解析をRT-PCRにより行った。その結果、mRNAレベルでも近接正常組織と比較して大腸癌組織において有意に高発現(p<0.001)していた。したがって、大腸癌組織において、このタンパク質が特異的に高発現していると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度、近年申請者らが見出したEMT誘導に関係し、早期肺腺癌の予後とも関連がある4種類のタンパク質を用いた新規血清腫瘍診断法の確立が困難であることがわかった。しかし、本研究で幅広く収集した様々な固形癌の患者血清および組織などの貴重な臨床検体を用いて、新たなEMT関連タンパク質の探索研究を実施し、より明確な腫瘍診断基準となる新規癌診断バイオマーカー候補を見出した。また、新たな血清プロテオーム解析法の開発は、順調に開発が進んでいる。 したがって、本研究は、若干の方向転換を余儀なくされているが、新たな成果が順調に得られており、現時点で大きな障壁は見られない。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、上皮間葉転換(EMT)誘導に着目し、様々な固形癌で、明確な診断基準となる腫瘍組織・血清を用いた新規診断法を確立することを目指して、以下の研究に取り組む。 1. 質量分析装置を用いて、血清中に含まれるタンパク質を網羅的に解析する方法を確立する。具体的には、1検体当たり3時間程度の測定時間で1000種類のタンパク質を同定できる方法を確立する。 2. 1で開発した方法を用いて、胃癌患者血清に含まれるタンパク質を網羅的に調べ、悪性度の高い癌患者の血清中に特異的に発現するタンパク質を探索する。 3. 先の研究で見出したEMT関連タンパク質の発現が、癌細胞の遊走能などに及ぼす影響を明らかにすると共に、癌細胞における役割を調べる。
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