研究課題/領域番号 |
16H05231
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
武城 英明 東邦大学, 医学部, 教授 (80291300)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 糖尿病 / 褐色脂肪 / ブラウニング / LR11 / 可溶性 / 検査学 |
研究実績の概要 |
エネルギー消費活性の増大したベージュ脂肪が糖尿病を抑止することから、そのような活性化脂肪を誘導する新規薬剤とその変化を正確に検出する日常診療における血液検査の開発が期待されている。平滑筋細胞のフェノタイプトランジッションから同定した脱分化遺伝子可溶性レセプターLR11をノックアウトしたマウスで、白色脂肪が褐色脂肪へ転換(ブラウニング)し安静時エネルギー消費量が増大することで、過剰に脂肪摂取しても病的肥満と糖尿病が抑止される事実を背景に、本研究は、可溶性LR11の細胞制御およびブラウニングによる病態修飾を解明し、血中可溶性LR11による活性化脂肪診断に向けた検査学的基盤を検証し、可溶性LR11の放出機構と新規の診療補助検査の意義を提示することを目的とする。初年度、研究計画に沿って、LR11ノックアウトマウス白色脂肪、褐色脂肪から均一化した前脂肪細胞を調整し、それをもとにSV40を導入した不死化細胞を作成し複数のクローンの樹立に成功した。増殖能は十分であり今後様々な条件下での分化能を検討する。さらに、これまでヒト心臓周囲脂肪が褐色脂肪の特性を有することを示すデータを得たことから、心臓周囲脂肪から前駆細胞を単離し褐色脂肪分化条件において成熟させたところ、褐色脂肪に特異的に発現する遺伝子が誘導されることを発見し、その関連遺伝子の発現解析も確認し褐色脂肪として包括的に遺伝子発現している細胞として解析できる見込みを得た。一方、東邦大学医療センター、アムステルダム大学、中国延辺大学の糖尿病患者を対象にした糖尿病合併症と減量反応性における血中LR11値の意義(脂肪細胞ブラウニング検出)の関連が解析された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画は、①可溶性レセプターLR11の細胞制御の解明(細胞内LR11 はプロテアーゼにより分断放出され脂肪細胞ブラウニングを抑制する。遺伝子改変マウス由来培養脂肪細胞における分断放出を解明する)、②ブラウニングによる病態修飾(リコンビナント蛋白による病態改善効果を細胞モデルで検証する)、③血中可溶性LR11による活性化脂肪診断に向けた検査学的検証(日欧中の協同研究により血中可溶性LR11値の病的肥満、糖尿病における検査学的意義を検証する)であり、初年度、計画通り、課題①②のためのLR11ノックアウトマウス白色脂肪、褐色脂肪から不死化前脂肪細胞を調整し複数のクローンの樹立、心臓周囲褐色脂肪前駆細胞の解析に成功した。また、東邦大学医療センター、アムステルダム大学、中国延辺大学の糖尿病合併症と減量反応性における血中LR11値の意義が解析された。以上より、初年度の研究計画をおおむね順調に達成したと考える。
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今後の研究の推進方策 |
初年度、研究計画に沿って、LR11ノックアウトマウス白色脂肪、褐色脂肪から均一化した前脂肪細胞を調整し、それをもとにSV40を導入した不死化細胞から複数のクローンの樹立に成功した。これまでの代表的な解析結果から増殖能は十分であり実験に用いられる特性を有すると判断されることから。今後、様々な条件下での分化能を検討する。とりわけ、LR11ノックアウトマウス由来白色脂肪細胞の褐色脂肪分化条件における反応性、LR11ノックアウトマウス由来褐色脂肪細胞の褐色脂肪分化条件におけるいわゆる増大した反応性(スーパー褐色細胞)を定量的に解析し、可溶性LR11と複合体を形成する膜受容体BMPR等との関わりを同定する。BMPR標的シグナル分子、転写因子活性化、転写遺伝子群を解析し、ミトコンドリア脱共役化機能調節へのネガティブレギュレータとしての時間反応性、律速化段階を定量化する。また、東邦大学医療センター、アムステルダム大学、中国延辺大学の糖尿病患者を対象にした糖尿病合併症と減量反応性における血中LR11値の意義(脂肪細胞ブラウニング検出)を明らかにする関連解析も順調に解析が進んだことから、今後、引き続きLR11測定を推進し解析対象数を増加させ信頼性を高めた多変量間の解析を進める。
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