研究課題/領域番号 |
16H05235
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
梅垣 菊男 北海道大学, 工学研究院, 教授 (40643193)
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研究分担者 |
清水 伸一 北海道大学, 医学研究院, 教授 (50463724)
松浦 妙子 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (90590266)
宮本 直樹 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (00552879)
高尾 聖心 北海道大学, 大学病院, 助教 (10614216)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 医学物理学 / 粒子線治療 / 放射線治療計画 |
研究実績の概要 |
平成28、29年度の研究成果に基づき、実際の臨床における標的マーカの呼吸性移動データを用い、陽子線照射スポット位置誤差の統計的/確率的評価に基づく線量分布解析、ロバスト性評価技術を開発した。また、標的移動と陽子線ビーム照射方向との相関を考慮し、一方向、多方向照射に対応した照射ゲーティングの方法、4次元線量分布最適化方法を開発した。線量誤差を考慮したがん病巣と重要臓器(Critical Organ)のロバストな線量分布評価方法を開発し、標的がん病巣線量・正常臓器線量ならびに照射効率(治療時間)のトレードオフスタディの方法を検討した。 (1)スポットスキャニングの特徴を活かした標的目標線量分布の設定と照射方法 :実際の臨床における標的マーカの呼吸性移動データを用い、ゲーティングで生じるスポット位置誤差の確率的/統計的評価を実施した。その結果に基づき、線量分布誤差低減と照射効率向上の観点でロバストなスキャニング線量分布形成方法を提案した。また、生物学的効果等を考慮した一方向、多方向照射陽子線線量分布形成法に基づくロバストな治療計画策定方法を検討した。 (2)動く標的の空間移動方向とビーム照射方向を考慮した線量分布最適化方法 :実際の臨床における標的マーカの呼吸性移動をモデル化し、移動方向と照射ビームの方向の相関に基づいて、4次元線量分布誤差を統計的に評価し、線量分布誤差を低減する陽子線特有の照射ゲーティング法による線量分布最適化方法を提案した。 (3) 臨床的観点からの治療計画最適化とトレードオフスタディの実現:位置誤差の確率的/統計的評価に基づき、線量誤差と照射効率(治療時間)をパラメータとしたトレードオフスタディの方法を開発した、臨床データを用いて比較検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題に対する研究計画に対応する平成30年度の進捗状況を以下に要約するが、いずれも当初の年度研究計画に沿って目標の研究結果が得られており、順調に進展している。 ・位置決め誤差、呼吸等で移動する動きの誤差等、種々の要因による位置誤差と、粒子線照射装置の持つ特有な非等方線量誤差等を統計的に評価する方法を開発し、線量分布誤差低減と照射効率向上の観点でロバストなスキャニング線量分布形成方法を提案すると共に、IMPTの考え方をもとに生物学的効果も考慮した線量分布最適化も実施している。 ・動く標的の動きに対して、移動方向をビーム照射方向とスキャ ニング平面方向に分解した新たなモデルに基づき、統計的/確率的誤差評価、照射効率を推定する方法を提案した。 ・これらの検討結果に基づいて、呼吸等で移動するがん病巣と隣接臓器の線 量分布、照射効率(治療時間)に対するトレードオフスタディの方法を提案した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、北海道大学病院陽子線治療センターを主な研究実施場所として、関連する北大病院医学物理部、工学研究院量子理工学部門、医学研究院放射線医学分野が協力し、医工連携体制で実施している。また、陽子線治療におけるIMPT治療計画、陽子線治療特有の動体追跡ゲーティング照射法を開発するため、すでにX線治療でIMRT、動体追跡を実施している北大病院放射線部とも連携して研究を推進している。今後もこれらの密接な連携を通じて 課題を解決し、実用化していく。また、国内はもとより、米国医学物理学会、米国/欧州放射線腫瘍学会、スタンフォード大学との共同研究等において、さらなる海外の研究者との交流、情報交換を実施し、研究内容を推敲すると共に、北大の陽子線治療装置の最大の特徴である、呼吸などによる標的の移動を計測してゲーティング照射する動体追跡装置を活用し、特徴的な研究を推進すると共に、その結果を世界に発信していく予定である。
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