研究課題/領域番号 |
16H05236
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
熊田 博明 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (30354913)
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研究分担者 |
高田 健太 筑波大学, 医学医療系, 助教 (10640782)
粟飯原 輝人 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (30268619)
照沼 利之 筑波大学, 医学医療系, 助手 (40361349)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 放射線治療技術学 / ホウ素中性子捕捉療法 / 患者位置合わせ / 治療計画 / モーションキャプチャー / モンテカルロ |
研究実績の概要 |
本研究は、モーションキャプチャー技術を応用したBNCT用の患者位置合わせと治療計画システムとの連携によってBNCT照射制御の高度化、高精度化を目指している。平成28年度までの研究によって複数のカメラを用いて照射室内の患者の位置をリアルタイムで検出する手法の基盤技術を開発した。この開発した患者位置検出装置のプロトタイプを筑波大学のBNCT用治療施設(iBNCT)の照射室内に設置した。また、患者を固定する技術に関する特許出願も行った。治療計画システム(開発コード:ツクバプラン)に関する研究では、同システムで立案した治療計画上の患者の位置座標情報を出力するための規格:DICOM-RTフォーマットを作成した。これを踏まえて平成29年度は、照射室内に設置した15台のカメラを用いて患者の位置を検出するための検証試験を実施した。カメラの位置検出キャリブレーションにおいて多くの手間と事後処理がかかることが判明したことから、このキャリブレーション処理を効率化するための改良を行った。平成29年度に実施した検証により、同装置で患者上の各点の座標検出精度は、±5㎜以内であることを確認した。この精度は、BNCTの位置合わせに求められる精度:±10mm以内を十分満たすことを確認し、技術をBNCTの患者の位置合わせに適用できることを確認した。 本研究成果は、BNCTの国際学会であるYBNCT9(京都大学、11月)や放射線防護等に関する国際学会:NUDOS2017(ポーランド、6月)で発表を行った。また、治療計画システム側の検証に関しては、モンテカルロ技術の医療応用に関する国際会議であるMCMA2017(イタリア、10月)で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画では、平成29年度までに患者の位置変動をリアルタイムで検出する技術を開発し、この検証を実施する計画であった。これに対して実際の研究においても、同技術の検証を実施して、患者の各点の検出精度が基準座標に対して±5%以内(目標精度:±10%以内)であることを確認し、当該技術の開発が計画通りに進められていることを確認した。治療計画システム側の開発においても、平成29年度までに単純ファントムでの評価、人体ファントムでの評価を実施する計画に対して、実際の研究においても人体頭部を模擬したリアルファントムでの評価を実施できることを確認した。 リアルタイム線量評価技術の検討においては、患者の位置検出装置で計測した患者上の各点の座標情報をリアルタイムで出力してツクバプランに取り込むためのインターフェイス技術とそのデータフォーマット(DICOM-RT)の検討を実施した。これも当初計画通りに進められている。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度までにBNCT照射室内の患者上の各点の座標をリアルタイムで計測する装置の基盤技術を構築した。平成30年度は、照射中の位置変動をリアルタイムで計測する技術の検証を行う。まず、照射室内にファントム(人体頭部模型)を用いて位置変動に対する検出精度の検証を行う。続いて患者の代わりとなる被験者(人)を照射室内に配置して計測実験を実施する。 治療計画システムに関しては、平成29年度に策定した患者位置情報を取り込む手法について、具体的な処理プログラムを制作してツクバプランに組み込む。同手法の検証を行うため、上記の患者の位置変動の計測データをツクバプランに取り込み、その位置条件をツクバプラン上で再現して線量計算を実行できることを確認する。 また、本研究のキーとなるのは、患者の照射位置をツクバプラン上で再現した後に、高速で線量計算を実行することが必要となる。しかしBNCTの線量計算にはモンテカルロ法を用いるため、計算に長時間を必要とすることが課題である。この課題を解決する手法として、最新のメニーコア・プロセッサであるXeon Phiによる並列計算を試みる。筑波大学には理研の大型計算機“京”よりも高速な“Oakforest PACS”(処理速度:世界第6位)を有しており、Xeon Phiを搭載している。この超高速並列計算環境を活用し、線量計算をこの計算機で処理する手法の構築を試みる。 患者位置計測装置で計測した座標情報を治療計画システム(ツクバプラン)に取り込んで位置情報を再現して線量再計算を実施する技術の開発を行う。ツクバプランに座標変換プログラムと線量自動計算処理を組み込み、患者の位置変化に応じて計算を実行する処理を導入する。
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