内分泌撹乱作用を疑われる化学物質が肥満をもたらすという仮説がある。小児において日常的に使われるパーソナルケア製品には、内分泌攪乱作用が示唆されている化学物質、即ちフタル酸、パラベン、トリクロサン、ビスフェノールAが含まれている。小児期の肥満が将来の生活習慣病に結びつくことを考えると、小児期に、パーソナルケア製品の使用と肥満やメタボリック因子との関連を評価する研究は重要である。一方、肥満に腸内細菌叢が関与するという仮説もあり、パーソナルケア製品使用が肥満に関連するならば、腸内細菌叢を介しているのかもしれない。そこで小学校(2年生、5年生)、中学校(2年生)を対象に、洗顔料、浴用剤、ヘアケア用品(シャンプー、リンス、トリートメント、ヘアスタイリング剤)、制汗剤、入浴剤、歯磨き粉、リップクリーム、基礎化粧品等のパ-ソナルケア製品使用状況を尋ねるアンケート調査(保護者が記入)、化学物質の尿中代謝物測定のための早朝尿、腸内細菌叢解析のため便採取、身長・体重測定、血液採取(小学2年生は除く)を行い、本年度データ収集を終了した。 身長・体重測定の実施された1012名を対象に、パ-ソナルケア製品使用の有無とBMI、腹囲、血圧、血糖、血中脂質との関連性について、まず年齢、性別で補正のみの統計解析を行った。BMIは制汗剤、乳液の使用、血糖値は洗顔剤、浴用石鹸、シャンプー、リンス、入浴剤、ベビーパウダーの使用、コレステロール値は洗顔剤、制汗剤の使用、HDL値はリンス、リップクリームの使用、トリグリセライドは洗顔剤、浴用石鹸、シャンプーの使用と有意な関連性が認められた。今後、使用頻度や含有物質、尿代謝物値や腸内細菌の情報と合わせ、詳細な解析を続ける予定である。
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