研究課題
HDL(High density lipoprotein)コレステロールの上昇をターゲットとした多くの臨床試験では動脈硬化性疾患の予防効果が得られていない。近年、HDLの抗動脈硬化作用については単なる血中濃度ではなくその質的・機能的な評価が重要であることが指摘されている。本研究ではHDLの酸化・変性修飾に焦点を当てて日本人集団の脂質異常症の特徴を明らかにする。リポ蛋白の酸化・変性修飾については内皮のLectin-like oxidized LDL Receptor (LOX-1) の結合能で評価し、そして複数のコホート集団においてこれらの指標と動脈硬化性疾患の発症、頸動脈内膜中膜複合体や冠動脈石灰化、大動脈の弾性など様々なアウトカムとの関連を検証し、同時にHDLの質的な側面に影響を与える生活習慣指標も明らかにする。研究機関中に、①変性HDLの測定系の確立、②神戸市民約1000人の変性HDLの測定および生活習慣との関連の検証、③滋賀県草津市民における変性HDLと冠動脈石灰化との関連の検討、④山形県鶴岡市における変性HDLと脳・心血管疾患発症者についてのコホート内症例対照研究を順次検討した。その結果、喫煙が変性HDLを増加させるが、飲酒や運動習慣の影響はほとんど受けないこと、変性HDLは、糖尿病や高血圧などの交絡要因を調整しても冠動脈石灰化や動脈硬化性疾患疾患(冠動脈疾患とアテローム血栓性梗塞)の発症と関連することが明らかとなった。しかし変性HDLは大動脈弾性機能の指標であるCAVI(Cardio Ankle Vascular Index)とは関連せず、また高齢層の冠動脈石灰化やラクナ梗塞とも関連しなかった。また今回検討したコホート内症例対照研究は追跡期間が短いため、追跡期間を延長した研究が今後必要である。また禁煙以外に変性HDL上昇に対する介入手段が示唆されていないため、既存の薬物や詳細な食事調査など規定要因の解明を今後進める必要がある。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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Atherosclerosis
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