研究課題
目的:超高齢化社会を迎えている我が国で、心不全の予防は極めて重要である。特定健診になり、心電図検査、胸部レントゲン写真が必須項目からなくなり、心不全が顕性になるまで放置されることが懸念されるため、不顕性心不全の段階で予防を行う必要があるが、心不全の疫学研究は極めて少なく、我が国における心不全の罹病リスクスコアーがない。そこで、潜在性心不全(PHF)の罹病リスクを解析し、そのリスクスコアーを我が国で初めて作成することを本研究の目的とする。方法:1989年に吹田市住民台帳から無作為抽出され、健診受診を受けた対象者のうち、2005年11月より健診時に、心不全問診、ナトリウム利尿ペプチド専用採血を開始した3800名を本研究の対象とする。2015年度末まで追跡して、BNP≧100ng/LをPHFと定義し、PHFの罹病リスクを健診データや生活習慣問診データ等から解析を行った。結果:心不全のリスクとなる心房細動罹病リスクスコアを作成し、性年齢、収縮期高血圧、弁膜症、期外収縮頻発、過体重以上、喫煙、過剰飲酒、non-HDLコレステロール130-189mg/dLを用いて10年後心房細動予測確率(0~27%)が求めることが出来るようになった。PHFについては、15,910人年の追跡期間中に251人のPHF(男性121名、女性130名)罹病がみられた。5年後のPHF罹病率は男性9.0%、女性7.1%であった。多変量調整Cox比例ハザードモデルを用いて、年齢、収縮期第2度高血圧以上、non-HDLコレステロール130-189mg/dL、心雑音、心房細動、脳梗塞、期外収縮、動悸、痩せ、eGFR<50が予測因子として採用され、PHF罹病リスクスコアを作成した(5年後予測確率1-64%、C統計値0.733, 95%信頼区間0.701-0.764)。
2: おおむね順調に進展している
初年度に心房細動罹病リスクスコアを作成し、心不全のリスク因子として用いることが出来るようになった。さらに、潜在性心不全罹病リスクスコアを作成して5年後予測確率を計算できるようになった。
さらにBNPを測定し、観察期間を延ばして、潜在性心不全罹病リスクスコアを作成して論文にする。また、BNP≧50ng/Lにおけるリスクスコアを作成し、それに生活習慣要因も入れて心不全になる前の段階(潜在性心不全境界型)で予防が可能かどうか検討する。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 8件、 招待講演 4件) 図書 (1件)
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