研究課題/領域番号 |
16H05255
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
村田 真理子 三重大学, 医学系研究科, 教授 (10171141)
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研究分担者 |
及川 伸二 三重大学, 医学系研究科, 准教授 (10277006)
翠川 薫 三重大学, 医学系研究科, リサーチアソシエイト (20393366)
平工 雄介 三重大学, 医学系研究科, 講師 (30324510)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | がん / 幹細胞 / 炎症 / エピゲノム異常 |
研究実績の概要 |
炎症因子である喫煙や飲酒、ウィルス感染が発がんリスクと考えられる頭頸部扁平上皮癌におけるmicroRNAの役割について検討した。がん組織において有意に発現が低下しているlet-7cを頭頸部扁平上皮癌細胞株に安定導入したところ、コントロールベクター導入細胞に比べ、細胞増殖、コロニー形成および細胞遊走が有意に抑制された。また、同細胞をヌードマウス皮下移植し、腫瘍塊形成、および浸潤能が抑制されることを確認した。let-7cがinsulin-like growth factor 1 receptor (IGF1R)やhigh mobility group AT-hook 2 (HMGA2)の発現を低下させることでがん抑制作用を示すことを明らかにした(Oncotarget 9, 8927-8940, 2018)。 タイ肝吸虫感染は胆管癌の重要なリスク要因である。我々はタイ肝吸虫感染胆管癌患者においてがん抑制遺伝子Early B cell factor 1 (EBF1)の発現が有意に低く、さらに8-oxodG高値かつEBF1が低発現の群では予後が不良であることを見いだした。また、正常胆管細胞株に比べ、過酸化水素耐性株および胆管癌細胞株でEBF1発現が有意に低かった。興味深いことに、正常胆管細胞株においてEBF1をノックアウトすると、幹細胞マーカーであるCD133およびOct3/4の発現が上昇し、また、細胞遊走能が高まった。すなわち、慢性的な酸化ストレスがEBF1発現を低下させ、幹細胞のがん化に繋がる可能性が示唆された(Redox Biol 14, 637-44, 2018)。 タイ肝吸虫感染胆管癌組織において、がん幹細胞マーカーCD44vを免疫組織染色法により検出した。CD44v9は正常胆管細胞では染色性を示さなかったが、胆管癌組織においては散発性胆管癌、タイ肝吸虫感染胆管癌ともに陽性であった。タイ肝吸虫感染胆管癌においては散発性に比べ有意に高いCD44v9陽性率であった。より強い炎症が幹細胞を誘導する可能性が示された(第88回日本衛生学会総会、2018年3月)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
頭頸部扁平上皮癌でのエピゲノム異常による発がん機構を明らかにし、国際学術雑誌に発表した。また、タイ肝吸虫感染胆管癌において酸化ストレスが遺伝子発現異常を惹起し、がん幹細胞に寄与する可能性を示した。炎症関連発がんにおけるエピゲノム異常の関与を示す結果を得ており、研究はおおむね順調に進捗していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
1. 炎症関連発がんにおけるDNAメチル化異常の役割解明と予防・治療法を検討する。 2. 炎症関連発がんにおけるmicroRNAの役割解明と、早期発見のバイオマーカー候補を探索する。 3. 炎症の増強に関わる因子として、傷害関連分子パターン(S100Pなど)について検討する。
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