研究課題
タイ肝吸虫感染胆管癌組織において、がん幹細胞マーカーCD44v9および炎症関連分子を免疫組織染色法により検出した。CD44v9は正常胆管細胞では染色されなかったが、胆管癌組織においては散発性胆管癌、タイ肝吸虫感染胆管癌ともに陽性であった。さらに、タイ肝吸虫感染胆管癌は散発性に比べ有意に高いCD44v9の発現を確認した。炎症を促進するRAGE (receptor for advanced glycation end product) のリガンドのひとつであるS100P および 炎症などで誘導され、プロスタグランジンを合成して炎症を促進するCOX-2との関連を調べた。その結果、両者ともCD44v9の発現と有意な正の相関が認められた。すなわち、CD44v9は胆管癌の新規のがん幹細胞マーカー候補であり、炎症が重要な因子であることが示唆された(Mediators Inflamm, 2018)。ヒト胆管癌由来培養細胞は、正常胆管細胞株に比べ、CD44v9および抗酸化酵素遺伝子の発現が有意に高いことを見出した。CD44v9のsiRNAによる発現抑制を行ったところ、細胞増殖が低下し、CD44v9が胆管癌進展に寄与することを明らかにした(第89回日本衛生学会総会、2019年2月)。フラットパネル ディスプレイなどの製造に使用されるインジウム化合物は間質性肺炎や肺癌などの健康障害が懸念されている。肺上皮細胞A549をインジウム化合物で処理し、炎症関連DNA損傷とその機序を検討した。インジウム化合物は低濃度においても8-nitroguanineを生成し、その生成にRAGEおよびHMGB1が関与することを明らかにした。HMGB1は幹細胞の遊走と増殖を誘導することが知られており、炎症が幹細胞をがん化する可能性が示唆された(第89回日本衛生学会総会、2019年2月)。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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