研究課題/領域番号 |
16H05256
|
研究機関 | 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 |
研究代表者 |
黒田 悦史 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 ワクチン・アジュバント研究センター, 上級研究員 (10299604)
|
研究分担者 |
森本 泰夫 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 教授 (30258628)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 肺胞マクロファージ / iBALT / IgE / IL-1alpha / DAMP / 微細粒子 |
研究実績の概要 |
昨年までの研究成果により、微細粒子の気管内投与とアレルゲン(卵白アルブミン:OVA)の曝露により形成される肺の三次リンパ節である誘導性気管支関連リンパ組織(iBALT)がアレルギー性炎症に重要であることを見出した。本年度はiBALTの性質について詳細に解析した。微細粒子の投与とOVAの曝露によりiBALTの形成が認められた。OVAを最後に曝露した日から1から3ヶ月後のマウスに関してiBALTの形成を調べたところ、曝露から3ヶ月経過したマウスにおいてもiBALTが消失することなく存在していた。また、このようなマウスでは3ヶ月後も血清中のOVA特異的なIgEが検出されており、このことからiBALT形成が慢性的なアレルギー性炎症に深く関与することが推測された。 また、昨年度までの成果より、肺胞マクロファージの細胞死がアレルギー性炎症に引き金になっていることを見出しており、アレルギー性炎症を引き起こしにくい微細粒子ではin vitroによる肺胞マクロファージの細胞死やIL-1α誘導が生じないことを認めている。そこで、これらの微細粒子のin vivoにおける効果を調べたところ、アレルギー性炎症を引き起こしやすい微細粒子の気管内投与では、肺胞マクロファージ数の減少とBALF中の炎症性細胞の増加、宿主DNAの放出およびIL-1αの誘導が認められたが、アレルギー性炎症を引き起こしにくい微細粒子を気管内投与してもin vivo における肺胞マクロファージの細胞死は認められず、BALF中の炎症性細胞、宿主DNAの放出およびIL-1αの誘導もすべて認められなかった。これらの結果から、in vivoにおいてもin vitroと同様に肺胞マクロファージの細胞死がアレルギー性炎症発症の引き金になっていると考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画していた治療モデルの実験に関しては、研究者の研究室の移動があったため、十分に進めることができなかった。次年度の課題として進める。iBALTの詳細な解析や肺胞マクロファージのin vivoにおける細胞死とアレルギー性炎症に関しては予定通りに進めることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
昨年度進めることができなかった治療モデルの検討を行う。抗アレルギー薬として代表的なステロイドを腹腔内投与し、血清中の抗原特異的IgEおよびiBALTの形成を検討する。またTh1誘導型アジュバントであり抗アレルギー薬としても注目されているCpG ODNを治療に応用する。CpG ODNを腹腔内あるいは気管内に投与しすることで、血清中の抗原特異的IgEやiBALT形成などのアレルギー性炎症の制御が可能か否かを検討する。CpG ODNについては既に購入済みである。
|