研究課題/領域番号 |
16H05261
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
堀口 兵剛 北里大学, 医学部, 教授 (90254002)
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研究分担者 |
中嶋 克行 女子栄養大学, 付置研究所, 客員教授 (10444051)
姫野 誠一郎 徳島文理大学, 薬学部, 教授 (20181117)
松川 岳久 順天堂大学, 医学部, 助教 (60453586)
小松田 敦 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70272044)
千葉 百子 順天堂大学, 医学部, 客員教授 (80095819)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | カドミウム / 腎障害 / 米 / 秋田県 |
研究実績の概要 |
秋田県は鉱山等の影響により土壌中カドミウム(Cd)濃度の高い地域が散在しており、米作農家はCd濃度の高い米の摂取により高度のCd経口曝露を受けたためにカドミウム腎症やイタイイタイ病の患者が潜在する可能性が高い。従って、当該地域の農家を対象とした住民健康診断による実態調査、及び中核医療機関に通院・入院中の腎機能低下を示す患者を対象としたCd腎症スクリーニングを実施することにより、秋田県の農家におけるCd曝露とその健康影響についての実態把握、Cdの健康影響発生機序の解明、農家の健康増進を目指す。 平成28年度の182名に引き続き、29年度も地元の行政やJAを通して受診者を募集し、10-11月に小坂町で3カ所、鹿角市で1カ所、横手市で1カ所の集落において健康診断を実施した。最終的に168名(男性82名、女性86名、38-87歳)の受診者が得られた。健康診断では血液・尿の採取及び骨密度測定を行い、自家産米を提供していただいた。 どの集落でもCdとヒ素の基準値を超える米はなかったため、当該地域で実施されている湛水管理の有効性と安全性は高いと考えられた。血中・尿中Cd濃度の中央値は対照地域と比較してほとんどの集落において有意に高く、腎尿細管障害の閾値を超える尿中Cd濃度を示した人が11名存在した。しかし、尿細管機能の指標である尿中α1-ミクログロブリン(MG)、β2-MG濃度の中央値は対照地域と有意の差は認められず、Cd腎症は受診者の中には存在しないと考えられた。骨密度への影響は見られなかった。 一方、大館市、大仙市、湯沢市の地域総合病院におけるCd腎症スクリーニングでは、4名の高β2- MG尿症患者のうちCd腎症の疑いと考えられたのは1名であった。対照の由利本荘の病院では64名の腎機能低下患者のうち、高β2- MG尿症を示す患者は13名と予想以上に多かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
県北地域のCd汚染地域において、年度始めより、地元の役場・市役所やJAへの訪問及び研究協力依頼、紹介された各集落での説明会、受診者のリクルート及び事前の同意書の取得、健康診断の実施、個人報告書の発送、各集落での結果報告会の開催など、年間を通してほぼ計画通りに研究を進めることができた。その結果、鹿角市では今年度で予定していたすべての集落において健康診断を実施することができた。また、健康診断の受診者は約200名を目標にしていたため、人数の点では若干少なめであったものの、初めての対象地域である横手市で健康診断を実施できた意義は大きく、次年度につながる成果であったと考えている。 一方、各医療機関でのCd腎症スクリーニングについては、各医療機関では対象患者のリストアップと血中・尿中Cd濃度の測定は現在順調に進行中であり、また対照の医療機関では60名を超える患者について調べることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、県北地域ではさらに小坂町で2カ所程の未調査の集落、及び県南地域では新たに横手市の集落1、2カ所で同様に健康診断を実施することを計画している。Cd腎症スクリーニングについては、担当医師の異動により大館市の医療機関から鹿角市の医療機関に変更し、また医療機関を県中央部でもう1カ所増やして実施する予定である。さらに、対照として県外の一般的な医療機関においても実施することを検討している。
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